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「椋も、もし戦闘になったとしてアタシがいたら邪魔になるでしょ?」
真琴から弱気な発言が飛んでくる。今朝の元気はどうしたのかと言いたくなるほどに沈んだ顔をして。
「ああ、邪魔だな」
「ちょッ!辻井君!」
率直な意見に思わずといった様子で金田が突っかかる。
「そんな気持ちで一緒にこられちゃ迷惑だ!真琴の力を借りずとも《色欲》の所持者も一人で探すし、一人で戦う」
「辻井君!!」
金田が椋を止めに入るがそんなこと気にしない。
これが今の椋の気持ちだ。答えの出ない自問自答を繰り返す真琴は今、完全に足でまといだ。『迷わない』。それはいつも彼女自身が行っていることであり、彼女自身のモットーでもある。
「そうだね……そうだよね………」
真琴はその言葉をしっかりと受け止める。
椋がどんな意図でこんなことを言っているのかも、自分に何が言いたいのかも理解していた。
彼女の顔に正気が戻り、ぱっとあげた顔で椋と金田を見やる。
「でもアタシはついていくわよ!迷惑かけようとなんだろうと乗りかかった船だもの!最後まで付きやってやるわよ!」
「よし!!」
真琴の宣言、意思の表れ、真っ直ぐなその瞳は決意という名の確信にも見えた。
彼女が突き出した手を椋が握り、お互いの意思を確認し合った。
終始クエスチョンマークを頭上に浮かべ続ける金田だったが、それでもなんとなく理解したのか2人に混ざるように二人の手の上に、自身の手のひらを重ねる。
「《色欲》がどうした!何が来ようと力を合わせれば勝てる!行くぞ!!」
椋が孤島外にも余裕で聞こえそうなほどの大音量でそう言う。
椋、真琴、金田とそれぞれの目をしっかりと見て叫んだ。
「「「おー!!」」」
孤島の上でようやく3人は完全に意思を疎通させひとつの結末へと向かって動き始めた。




