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電車とは名ばかりのこの超電導リニア。旧世代型の騒音問題、資源問題をなくした画期的な乗り物なわけだが、その分事故も増えたとか。超高速の物体、それだけならまだしも、無音という事もあり注意がそちらに向かわなかったとかで次世代型移行時はそれはもう酷かったという。そのため今は走行中、外にだけ聞こえるように専用の音楽を流しているらしい。この音楽は電車の出発時と停車時だけ車内にも聞こえるという仕組みになっている。

 

 そんなわけでその音楽を聴き所持者が降りる駅まで到着した。混雑時はかき消されて聞こえなかったその音楽も今ならしっかりと聞こえる。

 しかしまさかこんな遠くまで来るとは思ってもいなかった。そう思えるほどに時間がかかり、そして電車に乗っている人も少なくなっていた。

 

 「見失わないうちに追うわよ!」

 「おう!」「うっす!」


 しっかりと気合の入った返事を返し、長髪の綺麗な男を尾行する。

 学園内に走る電車はすべて地下にあるため、男についていく形で3人も地上に上がる。

 特に代わり映えのない白虎区加太エわからないこの場所。少なくとも椋と真琴は絶対にわからないわけだが。


 「金田!ここがどこだかわかる?」


 おそらくこのメンバーの中でここら地理に一番詳しいであろう金田に真琴が尋ねる。


 「うっす姉さん!ここは白虎区ではないですね!」

 

 意外な反応に少々驚きを見せる二人、もちろん続く質問を発しようとする前に金田が続けた。


 「ここは玄武区との区切り目にある中立域です!」

 「けどなんでこんなところに?」


 金田の言葉を信じていないわけではないが4限が始まるまでもうさほど時間がないというのにこんなところに来るのか理解できなかったのだ。

 

 「この中立域にある校舎は?」

 「うっす!各寮がレクリエーションなどで使う闘技場が一つ、水泳施設が一つ、全寮共有の建築科用の工事実習訓練施設が一つですかね」

 「可能性があるとしたら建築科かしら?でもさっきまで芸術科の教室にいたわけだしそれはないかな……」


 真琴がぼそぼそと唸るように言葉を並べていく。

 

 「さぼりか?」


 素直な疑問を浮かべる椋。そんな簡単な答えだったとしたならば考え込む必要もないわけだが、実際現時点ではそう考えるのが妥当ではないかと思える。

 男はただ一人でふらふらと校舎棟の一角をさまよっていたのだから。

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