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「ったく……いつまで止まってるのよこの列……」
立ち止まってから3分経つか経たないか程度の時間が過ぎ、真琴がぼやいた。
というのも今この列は電車待ちというやつである。この学園、業間休憩時には日常茶飯事のように起こる通称『電車待ち道』というやつである。
この人数の列が他のところでも多数できているのだ。それが一斉に移動を開始すると考えればこの現象が起こるのは当たり前だといえる。だんだんと消化されていくのは実感できるものの、通る電車の路線と時間の関係上、おおよそ5分ほど待たねば次の電車が来ないという仕組みになっている。
「そうイライラするなよ。カルシウム足りてないんじゃないのか?」
「うるさいわね!!イライラなんてしてないわよ!!」
「すごい言い切るな……。百人が百人がお前はイライラしてるって言うぞ……絶対……」
「あ~もう、うるさい!もう言葉を発するの禁止!!」
「はいはい、わかったわかった……」
「だから言葉発するなって言ってんでしょ!!」
頭をくしゃくしゃとかきむしりながら真琴が叫ぶ。相当イライラしているのが容易に理解できる。とはいえこれ以上彼女の神経を逆なでするわけにもいかないだろう。こちらも面倒なのはゴメンなので彼女の指示に従いしばらく言葉をはっしないようにする。
(なぁ、フール。起きてるか?)
『もしもの時のために少しでも休んでくれといったのはお前だろう……』
いつものように超速でフールからの返事が返ってくる。
彼はこれから真琴の許しが出るまでの話し相手だ。
(フールは所持者の場所とか分かるのか?他のエレメントみたいな感じでさ?)
『わからんでもないが正確ではないな。我が解るのは強力な能力を持っている人間がどこにいるか、というだけだ。そこの悪魔のように力の質やら何やらははっきりとわからん』
(相変わらず真琴のこと悪魔っていうのをやめる気はないのか?)
『そいつは《悪魔》以上に悪魔だ!我の敵だ!』
(ホント苦手なんだな……)
真琴はフールのことを至極溺愛している。ちなみに言うと某3年生の某ヘカテさんも溺愛されている。召喚されたフール達エレメントは些か小柄である。そこが真琴ゴコロを擽るとか擽らないとかでとりあえずもうたまらないらしい。いつしかフールはそんな真琴のことを悪魔と呼び避けるようになってしまったのである。
『そんなことはどうでもいい!それより《色欲》の情報はもう頭の中に入っているのか?』




