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「僕は……」
少々詰まった返事が来る。
「僕には仲間なんていないので……」
暗く出てきた言葉。それに伴った負の表情。それに全身の傷。椋はこれを何度も何度も見たことがあった。
中学時代の自分自身だ。暴行を受けたあとはこんな感じになってしまうのを椋は知っていたのだ。
「主犯格は誰だ?」
椋が問う。許せない、それが頭に浮かんできた最初の言葉だった。
「違うんです……僕が悪いんです……やられる理由は僕が作ったんですから……」
似ている、昔の自分に。いじめ、暴行自体を許しているわけではないが、それが行われる理由自体を作ったのは自分なのだから『しょうがない』と思い込んでいる。
「ちなみにその理由って?」
真琴が気遣ってかそうでないか、直球ど真ん中で確信をつこうとする。いつしか彼女と初めて出会った時も似たような話をした。初対面何に自分の薄っぺらい人生を語った記憶はまだしっかりと残っている。
「各寮対抗試合ですよ……。僕が勝利したのは蒼龍側に負けていいと指示されていた須山くんと途中棄権した坂本さん……それ以外の無様な負け方……。ここの総大将森本良樹先輩はそれがよっぽど気に食わなかったんでしょうね……ここ一ヶ月はずっとこんな感じの生活をおくってしたよ」
「そんな…………」
椋の口から自然と言葉が漏れる。そんなくだらないことでこんなことをされて許されるのか?
「じゃあ転寮したのは?」
真琴が金田に問う。嫌な予感しかしない。
「はい。第二寮で問題を起こした生徒を追い出すより、その問題を作った生徒を追い出した方が手っ取り早いという判断で寮監に追い出されました……。どこに行こうが変わらないんですけどね……」
予想どうり。そして最も聞きたくなかった答え。加害者が裁かれず被害者を裁く。こんなことがあってもいいのか……。椋の中に内蔵が煮えくり返る程の怒りが湧いてくる。同じ被害に遭ったことのある人間としての道場とかそんなものじゃない。人間として、その森本良樹、そして第二寮監、そして集団心理に逆らえない全ての白虎生。すべてが怒りの対象になった。
今年も一年無事に終わりましたね(´・ω・`)
読者の皆様に感謝を、今年も一年ありがとうございました。
来年も何卒お願いします(๑≧౪≦)てへぺろ




