9
しかしまぁよくここまで番狂わせが起こるものだ。連れ去ってきた金田は恐怖のせいかブルブルと身を震わせている。
「あの……金田……君?」
「ひぃっ!!殺さないでください!!」
「殺さないよ……」
ただの椋の呼び掛けに対し金田は、過度なリアクションとともにそんな叫び声をあげ全力で逃げようとする。
が、まぁ逃げようとすることなど予想できているので道は塞いでいるのだが。
椋が話し相手ではいつまでたっても話が進まないと感じたのだろう真琴が少し腰を屈め、金田に言う。
「何の勘違いしてるか知らないけどアタシたちは別にアンタを殺すために来たわけじゃない……」
「じゃッ……じゃあなんで白虎に辻井君が……?」
怯え怯えではあるが、椋が話すよりは会話がしやすい。その確信を得た真琴は七罪結晶関係の話をしてもいいかどうかの確認をアイコンタクトでとってくる。無言の問いかけに首肯で応え、それを許可する。こういう緊急事態には話してしまったほうが手っ取り早い。それにこんな金田の様子を見ていると脅したら一生黙っていてくれそうなので拡散することはないだろう。
「聞いて欲しいことがあるの…………」
○~○~○~○
「なるほど。つまり御二人は昨日のエンヴィとやらがほかの犠牲者を出す前になんとかしたいと……」
「まぁそういう事ね……七罪結晶の存在が表沙汰にならないようにするって言うのもひとつよ」
話しているうちにだんだん彼も状況を理解できてきたのか、落ち着いた喋り方に変わりつつあった。
「で、アンタはどうしたい?今アンタはアタシたちをどうにでもできる権利を手にしてるの。アタシたちは不法侵入生。寮の仲間に報告したらまぁ大手柄よね」
そんな問いかけを真琴が金田に飛ばす。今椋、真琴が装着しているOL。これひとつあればどこの寮にでも侵入でき、盗撮まがいの偵察もできと言ってしまえば超万能。その他のOLにはない権限を大量に有しているこれが欲しくない人間はこの世に存在しないといっても過言ではないだろう。




