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「そうかそうか。今日はうちの教室を見学していくのか?」
そんな質問が巨体から放たれる。
こっちがなのればそっちも名乗るのが礼儀ってもんじゃないか?と思いつつもおそらく第一寮1年の担任に対し肯定する。
「はい。僕たちも1年なのでとりあえずはここかなって」
「そうかそうか。じゃあ一応紹介するから私と一緒に来なさい」
「分かりました」
と言っても教室は目の前なわけで巨躯の教師が先陣を切って教室に入っていくのを追いかけるように椋と真琴もその後に続いた。
騒がしい教室は巨躯の教師がきたことにより一瞬で静まり返る。まぁこの見た目なら仕方ない。怒らせたら取り返しのつかないことになりそうな感じが漂っているのだから。
「あー。今日、本校に転入してくる2人の生徒が授業見学として様々な授業を見て回ることになった。まずはこの教室だそうだ、みんな失礼の内容に」
そんな簡素な紹介をされ一応拍手で迎えられる。巨躯の教師が自己紹介を促すため、教壇の真ん中まで移動すると先ほどの偽名を忘れないように挨拶をする。
「宇津井亮治です、今日は一日よろしくお願いします」
巨躯の教師は次早くしろ、と言わんばかりに真琴を睨んでいる。
キャスケットの少女は今さきほど椋が命名した名前を言うのが相当恥ずかしいらしく、彼女らしくないウジウジとした感じを醸し出しながら教壇の中央に立った。
「纏木……平子です……今日はよろしくお願いします……」
聞こえるか聞こえないかギリギリの音量で発せられたその声は男子受けしたのか、先程まで静かだった男子たちが少々盛り上がってきた。
がそれを押さえ込むように巨躯の教師は一度大きく咳をする。
「本日は転寮生を紹介する」
転寮生、つまりは寮を移動した生徒のことだ。まあ、麒麟や白虎と言った大きな塊からは離れることはできず、その寮土内での移動のことを表している。
各寮寮監がその権限を持っており、大体は問題を起こした生徒を追いやるようにほかの寮へと飛ばすのだ。
「入ってくれ」
その言葉とともに教室のドアが横にスライドする。その少年は無言のまま教壇の前に立つ。
入ってきた生徒は見覚えがある。
まだ小学校6年、いやギリギリ中学生位の小さな体。それに短髪。幼くあどけない女性のような顔。
そして各寮対抗試合白虎代表選手だ。
「白虎第二寮から転寮してきた金田雅です、よろしくお願いします」




