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「そうだ!」
椋はそう言ってOLを起動させる。校長と連絡を取るためだ。
職務が終了しているとは限らない。正直応答してくれる可能性の方が低いとは思うが緊急の案件だ。
ここ1ヶ月何度もボイスコールを飛ばしはしたが出る確率など3分の1程度だっため正直期待はしていなかったのだが脳内で村本重信の声が響く。
ここにいる二人にも聞こえるようにするためスピーカーの音を少し大きくする。
『君が私に連絡をとってくるなんて珍しいな』
「あなたが毎回出てくれないだけです……。仕事の方は大丈夫でしたか?」
社交辞令。まったくもって心配などしていないが案の定出てくれたということはドタバタしているわけではないのだろう。
『君も現場にいたのだろう。忙しいに決まっているではないか』
「やっぱり第4特殊闘技場の一件ですか?」
『そうだ。いま全力で修復にあたっている。わざわざ天蓋部を破壊しおって……。それより少年、君は奴と知り合いなのかね?』
校長が怒りの声を上げている。破壊そのものにではなく、破壊した部位についてだ。修復が面倒なのだろう。
「いいえ、覚えはありません……。《嫉妬》のせいで声で判別できなかったというのもありますがおそらく知り合いではないかと……」
『そうか……で、要件は?』
そういやそうだった。完全に目的の方を忘れてしまっていた。
「僕が黒崎と戦っていた時みたいに学園全体に戦闘用フィールドを展開して欲しいんです」
『理由は?』
「奴は、エンヴィは他の七罪結晶の所持者の位置を特定できるスキルを持っている可能性があります。早ければ今夜にでも襲撃をかける可能性があるからです……」
やつが襲撃を開始したら建物も、そしてそこに住む所持者以外の人間も被害を受ける。せめて傷を負ったあとにでも回復する手立てがあれば安心感は違う。そのための懇願だ。
『ほう、それは不味いのう……その情報はどこから仕入れたのかね?』
「本人です。襲撃時にそう言っていました」
『なるほど……わかった現在の作業終了次第すぐにでもそうしよう。要件はそれだけか?』
「はい校長。お忙しい中時間をとっていただいてありがとうございました」
再び社交辞令チックなセリフを吐く。礼儀というのは大切なものだ。
『君からそんな言葉を聞くと社交辞令にしか聞こえないな。まあいいでは切るぞ?』
「あ、バレてました?……了解です」




