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 事件の大まかな説明(これは青山も大体知っていたようだが)と、なぜ《暴食》襲撃の情報を素早くキャッチできたのかなども一応説明した。

 


 椋の悪い癖なのかもしれない。 

 こういった事情説明の様な事をしていると気がつけば自分自身を責めたてようとしている。

 しかし自分には責められる原因があるのだ。


 今日1日でたくさんのキーワードがあったはずだ。いつ気が付いてもおかしくなかった。

 大久保の言葉が自然に脳内に反復する。


 『ああウチか?ウチは第一寮2年大久保小崋(オオクボショウカ)っちゅうねん』

 最後、最有力情報として《暴食》が捕捉されたのは第一寮だった。少しは気にすればよかった……。

 出現先が男子寮であっただけで、女子という可能性は否定しきれない。そんなことにはすぐに気がついていたのに…。

 『ここ一ヶ月お腹が減ってしゃあないんやわ』

 最初に七罪結晶が学園に持ち込まれたのは一年生が入学した今から約一か月前じゃないか。少しは引っ掛かっていたのだ。

 

 今日受けた相談でもそうだ。急に空腹になり死にそうになる。関西独特の盛った話なのかもしれないが、今思えばこれは《暴食》の影響下にあったために起きた現象だろう。《暴食》に食欲を食われ常に満腹状態。しかしそれがいつまでも続いていたら、効果が切れると同時にかなりの空腹感が襲ってくる。まあそんなところだったんだろう。


 考えれば考えるほどに自分の愚かさに気がつかされる。


 なぜ気がつかなかった。


 心の中で自責の念が渦巻いている。そういや麒麟寮入寮当日の夜、負の《月》、大宮亜実に言われたことがあった。(自分自身の心が暗いと《愚者》も苦しい)と。

 

 粗方話し終わったところで、自分の気持ちの切り替えのために一度両頬を勢いよく叩く。


 突然の行動だったため青山に途轍もなく奇妙な目で見られたことは言うまでもないが、少しだけすっきりしたのは確かだ。

 すでにⅤには連絡を入れている。もうそろそろ彼も待っていることだろう。


 最後にこの寮、蒼龍第七寮での生活を締めくくるための別れの言葉を青山に送る。


 「一ヵ月という短い時間でしたが、本当にお世話になりました…」


 正座からのきれいな座礼で彼に向かい頭を下げる。


 「いやいや、体には気を付けてね」


 椋的には結構渾身の技だったはずなのだが、華麗なスルーを見舞われ、少々悲しくなってしまう。

 しかしこれでこの寮への未練はなくなった。と言えば大ウソつきだが、ここを出るための準備は全てすました。

 

 

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