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考え事をしながらも歩き続け、どうにか帰寮する。
蒼龍第七寮の看板を抜け、和風な玄関の扉を横にスライドし寮内に入る。
自分の部屋は一回の角部屋、そこまでなんとかたどり着き、メガネを外しテーブルの上に置き、ニット帽を脱ぎ捨てるて、青のベッドに身を投げる。
沈み込み、なかなか取れない満腹感と、大久保に振り回されたことによる疲労感からどんと眠気が押し寄せてくる。
ゆっくり沈むように意識が遠のく中、部屋の呼び鈴がなる。
「馳葺だ」
「ああ、秀斗か……ちょっとってくれ!」
脱ぎ捨てたニット帽とメガネをかけ直し、襖風ドアを開ける。
少し心配そうな顔をした馳葺秀斗は椋の顔を舐めまわすようにみて、ほっと一息つく。
「貞男、お前よく帰って来れたな……」
「おかげ様でな」
「あれ全部食べたのか?いや、じゃなかったらこんな健康そうな状態でここに帰ってくるわけがないな……」
「どういうことだ?」
少し意味深な発言に少々冷や汗を流しながら、秀斗に問う。
「あの店長、挑戦者が金持ってなかったら2日間無休無給バイトさせるんだぞ?知らなかったのか?」
「お前が教えたのは……大食いができるってことだけだったよな………秀斗……」
はぁ………とため息をつきながら友人の方をぽんと叩く。全く薄情ものだよお前は………。
「で、どうやってあれだけの量食い切ったんだ?」
「いやさ、第一寮の大久保って先輩が助けてくれたんだよ。3分で1キロ食い切ったんだぜ?考えられないよ」
「王者が!?いや………確かに帰り道すれ違ったな……」
「本当にあの人ってチャンプなんて呼ばれてんだな……ハハハッ………」
苦笑いしながら地味な幸運を噛み締めたのだった。
「それより貞男、お前晩飯はどうするんだ?」
秀斗からの質問。考えてもいなかったというより考えたくないが正しい。
「俺はいいよ……後一gでも腹になにか突っ込んだらいろんなものがフルバーストしそうだし……」
「そ、そうか………わかったよ。また後でな」
そう言って秀斗が廊下に消えていく。
眠気が取れないせいか再び先程とほとんど違わない行動をとりながらゆっくりとベッドに身を投げる。
体も意識も沈んでいくのをなんとなくで実感しながらゆっくりと眠りについた。
第13章 現状、《暴食》 終




