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《愚者》からの軽い説教を受けた後、青山からの依頼のメールが返ってくるのを待つ。
特定にそう時間はかからないだろうと思っていたのだが、これがなかなか面倒な作業を通さないといけないそうで、もう少し時間がかかるとのことだった。
さてこの間何もすることがない……訳ではないがこの第七寮付近以外に出歩けない身としてはここらはたいてい回り尽くしてしまったわけで、何をしようものかと迷う。
現在の時刻11時49分、朝を抜いてしまったためお腹の虫が騒ぎ出す。
この時刻になると新田の美味しいご飯が恋しくなるわけだがワザワザ休日に飯をいただくためだけに押しかけるのは自分でさえどうかと思う。
(なーにすっかな)
と青を基調としたベットに身を投げ考える。
『修行でもせんか修行でも』
とこんなことをしていたらいつもフールに怒られるわけなのだが、こんな学園内で修行をするスペースなんてものは存在しない。
強いて言うなら寮土戦に赴くくらいだろうか?
しかし今日は休日。おそらく校舎棟にいる人間は部活動やらその他もろもろで慌ただしくしているのがほとんどだ。そんな真面目な生徒を部活中に襲うというのはあまりに紳士的ではないため見送る。
というよりそもそも椋は寮土戦には消極的だ。能力とかの面では問題ないのだがどちらかというと素顔が割れる可能性があるので必要最低限にしか行わない。
はてさて何をしようものか……。
迷っているうちにも時間は無情に過ぎていく。
(とりあえず飯でも食いに行くか……)
よっと掛け声を上げ青の柔らかいベッドから起き上がる。
制服の胸ポケットから財布を取り出し残金の確認……………………。
311円……。これが現実だ……。
しかし蒼龍にはこのはした金でもたらふく食べられる施設が存在する。
[大食いチャレンジ!お好きなパスタ2kg完食できたら10000円!]
ちなみに後払いである。さらにちなみに一回2000円である。
つまりは!その2キロに椋の人生がかかっているのだ!
ここは腹をくくるしかない。それが男って生き物なのだ!
と我慢すればいいだけの話なのだがどうせ時間もないのだ。やれるだけやって無理ならそんときはそんときだ。
そんな軽い気持ちで店に向かうことにした。
しかし椋はまだ知らない。このパスタをこれまで完食できた人間は2人だけだということを…………




