表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
235/414



 不意に横に並んだもうひとつのブランコがキィと音を立て少し揺れる。

 

 「どうしたんだ?貞男(サダオ)?」

 

 横から聞こえるそんな声、ここに来てから最初にできたであろう普通の友人、長瀬雄輔(ナガセユウスケ)だ。同じ第七寮の生徒にしてこんなあまり素晴らしいと言えないあだ名をつけ始めた人間、短めの黒髪、左の目元の涙ホクロがトレードマークだ。

 首を少し上げそんな彼の顔をみる。

 

 「その呼び方やめてくれよ……ところでなんでこんなところに?」


 こんな休日の朝っぱらから公園にいる人間なんて自分だけだと思っていた椋は素直な感想を述べる。


 「いやさ、不意にカレーパンが食べたくなってだな、ふら~とパン屋に行こうとしたら道を走っていたトラックが子猫を轢きそうになっててな?それを助けようと飛び出したら偶然その先で子犬も車に轢かれそうになっててな……三回転ほどした先で二匹を下ろすと偶然そこにいつも行かないパン屋があってだな、これは新しい発見だ、と思い中に入ると何故かそのパン屋にはカレーパンが置いてなくてだな、仕方なくいつものパン屋に行こうおもい歩いてるとこんなところに貞男がいたって訳だ」

 「お前はいつも壮絶な人生を送ってるな……」


 と日頃聞かされるそんな話に少々の笑みがこぼれてしまう。

 最初は全部嘘なんだろうと思っていたが、行動を共にするようになってから本当にそんな事が起きていることを知った。子猫一匹だろうがアリ一匹だろうが命をかける、それがこの男だ。


 「ところで貞男、こんなとこで何してんだ?」


 投げかけられた質問にどうやって返そうかと思いながらとりあえずごまかす。


 「いや……えっとだな?今後の活動方針についてだな……」

 「嘘つくんじゃあねぇ!」


 一喝。


 「朝っぱらの公園であんな負のオーラ出しながら沈んでるやつがそんなことで悩んでるわけがねえだろ!!」

 

 とまあこんな面倒くさい奴なのだが良い奴なのだ。


 「冗談だよ……」

 「じゃあ何なんだ?悩み事か?」


 と真剣に相談に乗ろうとしてくれる長瀬には悪いがいつもの手段で回避する。


 「実はな長瀬…玄武寮にある最近できたパン屋、あそこのカレーパン、一つ300円と馬鹿にならない値段ながらヤバイらしい……」

 「な……貞男!!それは本当かァ!」

 「ああ、確かな情報だ……しかし俺は玄武とのコネクションが無い……どうやって手に入れようか真剣に迷っていたんだ……」

 「それは深刻だな……会議をはじめるぞ、貞男!!」

 

 要するに馬鹿なのである。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ