24
話したのはまず《愚者》をこの身に宿していること。新田はエレメントについては知らなかったようでそこから説明を開始したのだが、今回の件にあまり関係ない自身の過去について語ることは決してなかった。
彼を信用していないわけではないが、そう易々と話せる内容でないことには変わりない。
そして各寮対抗試合で起きた七罪結晶に関わる大方の話。山根から聞いた話も、戦ってわかったことなども話した。
最後に今日の呼び出しで聞いた話は全て話した。
「つまり君はその校長の《魔術師》のエレメントが持っているっていう《愚者》の力がどうしても欲しいって言うわけだね?」
「まあつまりはそういうことになるかな……。でもそれは最終結果であって今は七罪結晶の回収を優先すべきだって思ってるよ」
「なるほど……。まぁここを出て行く理由は理解ったよ。でも他のメンバーへの説明はどうするんだい?」
と投げかけられた質問の回答に詰まってしまう。考えていなかったのだ。事情を説明すればいいのだとは思うが、この件は契に話すわけには行かない、これは最低限の村本との契約だ。今現在村本の能力がこの身に影響を及ぼしている中、そう簡単にそれを破るわけにはいかない。
その上沙希や真琴にもこのことを話してしまえば、最悪着いてくると言いかねない。それは自分にとっての最悪の結果となる。
しかし黙って出て行くわけにもいかないだろう。この事件を解決するには相当に長い時間を要することだろう。ずっと部屋に引きこもっているという無茶な設定も無理がある。いっそ一時的に家に帰ったということにしようか?しかしそれなら沙希が家に連絡を取りそうな気もする。
「僕が出来るフォローは少ないと思うけど、協力できることはあるかな?」
そう語りかけてくる新田にも悪いが、今のところそんなものはない。せめて自分がもうひとりいればいいのだが……。
「そうかっ!!」
となんの根拠もない思いつきでだが、OLを起動させ、村本に連絡を取ろうとする。
生憎応答せず、メッセージを残せとのテンプレート的な電子音声が帰ってくる。
『辻井です。お願いがあります。僕の身代わりを立ててください。僕が麒麟寮にいない間ここで生活してくれるような人を探してください!』




