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つまりこの村本、及び正の《魔術師》の能力はそういったことに関係あるものなのだろうか?ようやく完全に楽になった身体、そして思考回路でそんなことを考える。
時間停止、そんなチート臭い技聞いたことがない。臭いというより本物である。もしそれが戦闘に応用できるようなものなら尚の事である。一体そんな力を使えばどれほどの事ができるのだろうか?想像だけがどんどんと膨らんでいく。しかしそんな想像をはるかに超える能力だということぐらいなんとなく理解できる。
これがフールが言っていた勝てないという理由なのだろう。
「この学園、全生徒が同時に申請を飛ばしてきた場合はどうするんですか?」
「それくらいのキャパシティを備えていないでこの学校の長が務まるわけがなかろう」
「はあ……」
普通ホルダーがエレメントの力を使うとそれなりに体力を消耗するものである。《隠者》からの体験談+α《愚者》のホルダーとして実体験までしているのでそれは明白だ。
そんな生活を2年間平然と送ってきたと考えるだけでこの巨漢老人が化物だということが十分に理解る。
「質問いいですか?」
「ああ、なんだね?」
手で先ほど焼かれ刻まれた『刻印』とやらを押さえ尋ねる。
「この『刻印』の誓約についてある程度説明してもらっていいですか?」
「うむ……。使用するには心臓の鼓動に合わせて3度胸を叩けばいい。使用時から1時間で修復が開始され、その後再び使用するには1時間の間が必要となる。『刻印』自体は体内に刻まれているものなのでフィールドのように弾き出される心配はない。しかしフィールドと同じように《死》には対応していない。これくらいだ」
「はい……ありがとうございます」
これから始まるのは七罪結晶狩りとでも言おうか。ひとつは破壊してしまったため、おそらく6つ。そのうち3つはまだ発見されていないがそれを探し出しつつ、所持者から結晶を回収する。これが今回の命令だ。
ここで聴かねばならぬこと出てくる。
「校長、発見されたのは4つと言ってましたよね?『強欲』を除く残りの3つはどこで反応があったんですか?」
「ふむ……いい質問だ。ひとつは朱雀で『怠惰』の反応があった。もう一つは『色欲』白虎にて、そして最後は校舎棟にて確認された『嫉妬』だ」
「俺は麒麟寮生。他寮の生徒とどう接触を図ればいいんでしょうか?」
「それは問題ない。OLを特別製のものに差し替え各寮入口での検査をスルー、制服は各寮の物すべてを渡しておくので潜入は問題ない。教師全員に事情を説明し様々な授業に参加できるようにもしてこう」
「今回の件に駆り出されている間、本来俺が受けるべきだった授業はどうなるんですか?」
「今回の件が終われば特別待遇というよりも全教科普通以上の成績は加点してやる。あくまで成功すればの話だがな」
釘を刺される。痛い……。
しかしまあこれで今回の件について大体把握することができた。




