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 契は七罪結晶の誕生の理由を知らないみたいだった。

 まあ七罪結晶が製造された当時椋も契も大体5歳程、知る由もないだろう。

 話すべきか話さぬべきかは分からない。

 まあ山根には無闇矢鱈に話すなと止められているため今ははなさないが、契も関係者には違いないのでいつか話す日が来ることだろう。

 

 「そうか……今のところ聞きたいことはそのくらいかな、契は俺に聞きたいことはないのか?」


 一応は確認しておく。こっちが一方的に訪ね情報だけ得て帰るのはあまりにも非常識というか、なんだか悪い。

 答えられる限りならば《愚者》達、エレメントの話もしようかと思ったわけだが、契の口からは想像もしない言葉が飛び出してきた。

 

 「いや、いいよ、昨日は無理に話を聞いたからね。そのお詫びというかなんというか……」

 「契がそう言うならいいけど……」


 少しどころかかなり驚いるわけである。彼なら貪欲に知識を吸い取ろうとすると思って心の準備をしていたために少しスカされた感じになってしまう。

 

 「ところで椋、時間大丈夫なのかい?」

 

 そんな契の声を聴いて改めて時計を確認する。現在の時刻は大体10時半。まだまだ余裕があるわけだが、このままここでそれだけの時間を潰すにしては少し長すぎる。

 

 「あ――――。ごめんそろそろでないとダメだ。」


 そう言ってテーブル上の湯呑に入ったお茶をすべて飲み干し、それを自分で洗い元の場所に戻すと、契&懋の部屋をあとにすることにした。

 ここに居たくないから嘘をついたのではなく、せっかくだから空き時間にスケジュールを追加したのだ。

 目的地は病院である。もちろん観戦していただろうが、一応勝利報告でもしておこうかなという気持ちで乙姫の所に行くことにしたのだ。

 

 「突然押しかけてゴメンな。ありがとう!」

 「いやいや、こちらこそ」


 そう言って笑顔で送ってくれる契を置いて駆け足で部屋をあとにする。せっかく話すのなら時間は多いに越したことはない。

  ここから病院まではおおよそ10分、そんな微妙な時間電車に揺られながら乙姫の元に向かうのだった。

 

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