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山根からあらかたの話を聞き終え、少し考え込む。と、素朴かつ重要な疑問が浮かんでくる。
『他の七罪結晶は今どこにあるんですか?』
『そこなのよ…。そもそも七罪結晶は噂の姓で研究自体が凍結されて完成品の七つはアーティファクトアーツ社、つまりは永棟君の家の会社の地下に封印っていたら大袈裟だけど、金庫に保管されていたはずなの…。』
『…………盗まれたって事ですか?』
椋には少し思い当たる節があった。昨日宴の前、契の部屋から聞こえた緊張感ある契の電話だ。慌てていた様子などから察した結果、この結論にたどり着いた。
しかしそれはあまりにも物騒な話してはないか?今この試合中、尾裂狐が登場しただけでこれ程押されているのだ。こんな悪魔じみた物が七つも盗まれたとなれば大問題どころの話ではない。
『おそらく…だけどね。玄武の彼がどうやって七罪結晶を手に入れたかは知らない。でもあの様子じゃ、もうすぐ人を襲うようになるわ…。』
『どういうことですか?』
『最初から説明するわ。まず七罪結晶、これから発せられる能力のことをギルトスキルというの。』
『なんで分けるんですか?七罪結晶も人工結晶の一種なんですよね?アクトスキルでいい気がするんですけど…。』
そんな素朴な疑問、正直どうでもいいことを聞く。
『いい所突いてくるわね。これにはちゃんとした理由があるの。辻井君、人工結晶の動力源は?』
人工結晶自体は最近初めて使ったばかりだが、そのくらいの一般常識は頭の中に入っている。
『ソルスエネルギーですよね?小脳で生成されてるとかいう…。』
『そう、ソルスエネルギー。それが普通の人工結晶の動力源。でも七罪結晶は違う。アレは使用者の感情を動力源にするの。』
山根のそんな言葉の理解に苦しんでいる時に、地下鉄の薄暗いホームに何故か陽の光が差し始めた。とっさにとった行動ではあるが座り込んでいたところから線路に向かって思い切りダイブする。
ついに場所がバレてしまった。尾裂狐らしき黒い球体がこちらに向かって跳んでくる。しかしそれを確認してから回避するのでは遅い。
自分のとっさの判断GJ!!と心の中でガッツポーズを取りながら線路に両足でしっかりと着地する。
『移動しながらですけど話、続けてください!!』
そう言って天井にある先ほど尾裂狐があけた穴を見つめ、右足の光輪を消費し一気に飛び上がった。




