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「ところで辻井君…キミ…僕の能力のこと、どこまで知ってるのかな?」
黒崎が問うてくる。
「答える義理なんてない!」
黒崎の言うことに耳を傾けてはいけない。故に突っぱねるように答えたのだ。
現在の二人の距離は7mほどだろうか、それでもわかる。だんだんと黒いオーラのようなものが増幅されていくのが。
「僕さぁ…昨日できる限りの時間を使って君のことを調べまわったんだ!!!でも出てきたのは先月起きた能力者少年集団暴行事件の記事だけだった。これっておかしいと思わないかい?君ほどの能力者の詳細がほとんど引っかからないなんて異常だ…実績を残していないわけがない!!!」
正直自分のことを調べて小林の事件が出てくることにも驚きだが、なによりそこまでする黒崎が信じられない。正直言うと少し気持ちが悪い。生理的に無理というやつだ。反応を示さない椋だが、黒崎は気にする様子もなく続ける。黒いオーラがだんだんと膨れ上がる。昨日よりも、今日の開会式の時よりも更に濃く溢れ出す。
「知りたいんだ!!!君からは面白さが消えない!!!もっと君のことを知りたい…。そんな欲求で僕の心は埋め尽くされてるんだ!!」
そう言いながら黒崎は姿勢を屈め、どこぞの忍者のような走り方をしながらこちらとの距離を詰めてくる。目測で2m、いや、1・5m程の地点で黒崎が姿を消す。
移動先はだいたいわかる。椋は少し目線を上にやり、黒崎の姿を確認する。予想通り黒崎は上空でドロップキックの姿勢を撮りこちらに勢いよく飛んできている。
『今よ!!辻井君!!』
脳内で山根の声が響く。その声にためらうことなく椋は光輪の『痕』を起動させるために叫ぶ。
「弾けろ!!」
その声と共に黒崎の左足に残った光輪の『痕』が弾け霧散する。見た目での規模はいささか小さいが、実際の威力は見た目と反比例する。流石の黒崎も須山戦で見ているとはいえ流石に驚きを隠せないようで、珍しく?狂気じみた笑顔は呆気に取られたように間抜けだ。
黒崎の体は頭を中点にして足で円を描くように反時計回りで90度回転し、ちょうど逆さ吊りのような姿勢になる。あまりにも無防備なその胸元に、椋は勢いよく光輪を消費し左拳を打ち込んだ。




