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 ためらいの表情を見せ、契の言葉が何度も詰まる。


 「僕の家のことは今日話したよね?人工結晶を作っている、というよりは人工結晶を開発した会社……。祖父の娘、つまり僕の母親は自ら進んで人工結晶の被験者になった。いろんな強度の、いろんな種類の、様々な人工結晶を使い続けた。そんな母から生まれた僕はもちろんと言ってはなんだけど天然結晶をその身に宿した。でもね、祖父がそれを許さなかったんだ。『我が家の者がそんなものを持っていてはいけない』ってね」


 彼の言葉が確信に繋がっていく。

 それはあまりにも予想外すぎるものだった。しかしこの予想が正しいのであれば全て合致が行く。なぜ彼がエレメントを欲するのか、そういえば入学式の時に注意を払っていたら気がついていたのかもしれない。


 「それって…つまり…」


 椋の焦りに契が静かに頭を縦に振る。


 「そうだよ……。僕も無能力者だよ…椋」


 予想外であり予想通りであったその言葉に周りの二人も少々反応するが二人は静かに話を聞いている。


 「とは言っても椋の場合とは違って人工結晶があった。それはもう狂ったように練習したよ。そのおかげで今じゃ手足のようになった…でもね、限界があったんだ。どう頑張っても越えられないものが、現実という壁が立ちふさがったよ。椋と同じようにいじめられた過去もあった」


 契の表情がだんだんと沈んでいく。


 「最初はそもそも天然結晶を宿さず生まれてきたものだと思ってた。けど中学2年生のある日、会社で祖父と、蒲生さんっていう《戦車》のエレメントホルダーが話してるのを偶然聞いてしまった。祖父が僕の天然結晶を粉微塵に破壊したことをね」


 契がゆっくりと顔を上げ椋の目を見つめる。


 「そしてエレメントの存在もその時初めて知った。悔しさというか……もう何かにとりつかれてるんじゃないかって言うくらい調べまわったよ…。天然結晶はもうないんだから、縋る先はエレメントしかなかった。でもわかったのはそれが何種類あるかぐらい……。で、そんな時に椋の部屋から《愚者》なんて単語がきこえてきたもんだから吃驚したどころじゃなかったよ…」


 しかし契はあげた顔を再び沈め、嘆くように地面に向かい叫んだ。


 「でも!…それも無理だと確信したよ…。僕には先輩や椋のような経験はできそうにないし、何よりそんな狭い枠に僕が入れるわけがない…。諦めるよ…」


 廊下に響くくほどの大きさのその叫びに、一番最初に反応したのはこれまで一言も喋らなかった懋であった。


 


 

 

 

 

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