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ひょこっと顔を出す二人、黒い影の右側の方から声が聞こえる。
「いや…あんまり帰りが遅いから懋と一緒に探してたんだ」
契の声をしたシルエットが片手でハシゴをつかみもう片手で後頭部をガリガリ掻きながら笑っている。
「とりあえず…そこ、しんどいだろ…上に登ったら?」
狭いハシゴに男二人がギリギリしがみついている光景はとてもシュールだが、このまま放置するのは酷だろう。
「そうさせてもらうよッと!」
契らしき影が勢いよく片手だけで器用にハシゴを登りきる。
それを追うようにもう一つの、おそらく懋であろう影も登ってくる。
「一言だけいいかな?」
思わず聞きたくなることが1つだけあったのだ。
「何かな?」「なんだ?」
「なんで二人同時に上る必要があったんだ……?」
「辻井君よ…それは聞かないのがお約束ってもんだと思うよ…」
いつの間にか後ろにいた大宮がそんなことを言ってしまったため、それ以上の追及ができない。
少しつまらなそうな顔をしながら大宮の方を振り向くと彼女は二人に至って真剣な顔で、
「ところで二人は私たちの話をどのあたりから聞いてたのかな?」
そう問いかける。嘘をつけなくするような、まっすぐな瞳で二人をにらみつける。
「先輩のナチュラルスキルの話くらいからです…。盗み聞きするつもりは無かったんですけど…すいませんでした…。」
屋根の上で契が、それに続くように懋が大宮に対して深々と頭を下げる。
スッと顔を上げた懋が椋に問う。
「ところでさ、椋の能力ってあの光の輪を出す特殊系じゃなかったっけ?それにしゃべり声も4人分聞こえてた気がするし…。残り二人はどこいったんだ?返すとか返さないとか…」
そんな懋の素の質問が、彼らが大宮の過去の話を聞いてなかった何よりの証拠なのかもしれない。
契に《愚者》のことを明かすつもりだったため、今更懋に隠しても仕方がない。
「『移り気な旅人』!」
その言葉と共に椋は自分の掌の上にフールを召喚させる。
大宮の方を見ると彼女もすでにヘカテを召喚させていた。
「これが残り二人。こっちがフール、俺の中に住んでる《愚者》のエレメント。あっちはヘカテさん。大宮先輩は負の《月》のエレメントホルダーだよ」
若干茶髪少年が一人『エレメント』やら『エレメントホルダー』という言葉に首を傾げているが、もう一人はそれをしっかりと理解している。
「今度は召喚系…?え?あれ?それがさっき言って〝なんちゃらイーター〟って椋のナチュラルスキルの効果なのか?」
と予想通り茶髪のバカがパニックを起こした。




