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「減らず口も相変わらずだな、ヘカテ。まあ生憎あの戦いのせいで我もかなり力が衰えてしまってな。見つけるに見つけられんかったのだ」
「じゃあそこの坊やはアイツの代わりになるほどすごい器なのかい?」
アイツとはフールの前の憑代の事だろうか?
フールはフンッと鼻をならし、自慢気に言う。
「フッ!此奴はカノンよりすごいぞ!ヘカテ。お前もわかってるだろうが今の時代の《戦車》の奴のせいでガキ共は貧弱ではあるが能力を手にしている。そこの娘もそうだろう?」
「ええそうね。この子の能力は『休息の揺り籠』。超低速自己回復能力であり究極の自己防御壁よ。回復中は他からの一切の干渉を受けない完全に安全な揺り籠ってところかしら。」
「ふむ……過去の虐待から来た能力か…」
そんなフールの考察を打ち破るようにヘカテが叫ぶ。
「ツグのことはちゃんと話したわ。そこの坊やの事を教えてもらえるかしら?」
フールが椋の方に振り向き、目くばせで確認を取る。話していいかどうかの確認だろう。迷わず首肯する。
「此奴、椋の能力は『愚かな捕食者』といってな、他者の能力を吸収し自分の能力として扱うことができるという能力だ」
「その対象範囲は?」
少々興味ありげな目つきをしたヘカテがフールに問う。
「全てだ」
隠す意味もなく自信ありげな顔でフールが即答する。
「もちろん《我ら》、この世界ではエレメントと言うのか?も含む。成長すればその先も…。すべて食い尽くしてしまう」
「で、あなたもそこの坊やに吸い込まれてその子に宿ったという事かしら?」
「ああ、そうだ。しかし此奴の力があれば、あの戦いで奪われた我の力を取り返すことだってできるというわけだ……。というわけで返せ!ヘカテ!」
フールが小さな手をクイクイッと動かしヘカテに促す。
「嫌よ。あれはそもそも力を持ちすぎたから連合が作られたんでしょう。それに今あなたに力がないといっても返す義理はないと思わない?」
「《隠者》の奴はパパッと返してくれたぞ!!」
「それはあの子がそういう性格だからでしょ?どうしても返してほしいって言うなら何か私の役に立って頂戴。それなら返してあげないこともないわ」
小さな体から放たれる挑発気味の発言。そして冷たくきつい視線が月の明かりしかない屋根の上を包み込む。
そしてその雰囲気をフールの言葉が打ち砕く。
「こっちは下手に出たやってるんだ。くだらないことばかしぬかすのなら力づくで奪い返すことになるからな」




