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俺はあの時何を願った…
そう、大切な人を守るための…
いや、違う。目の前の敵を蹴散らすための強い力を望んだんだ…
それじゃあ意味がなかった。最初から少し間違えていた。
本当の強さというものをはき違えていたのだ。
乙姫を救おうとしたのはただ沙希を救えなかった時のくやしさを払いうためのものだった。
乙姫を沙希の代わりとして見ていたのだ。
「やっぱり…俺は愚か者だ…」
そう口から漏れ出してしまう。
その声にピクンと反応した大宮が微笑を浮かべ言う。
「愚か者…ねぇ…。君の心の中はとっても暗いね…。君が何を悔いているのかなんてわからない。でもね?君が行ったことも一つの強さなんだと思うよ?君が居なかったら坂本さんがどうなってたかなんてことは火を見るより明らかなんだし…」
その優しさにあふれた笑みを見ると心が苦しくなった。
「それに!」
と気合を入れたかのように歯切れのいい声で彼女が立ち上がる。
「そんなに暗いままじゃ、君の中の《愚者》も苦しいと思うよ!!」
それだけ言いのこしどこかへ走り去っていった。
そして彼女がいなくなってから気がつく。
「俺…《愚者》のこと彼女に話してない……」
それに気がつくと同時に、急いで大宮を追いかける。
普通の展開なら、『もうそこには誰もいなかった』現象が起こるはずだが、そんな展開にはならず大宮は山根が取り付けたというハシゴ状の階段をゆっくりと下っていた。
「先輩…あの……その、なんで《愚者》のこと知ってるんですか?僕話してないですよね?」
そんな発言に彼女はしがみついているハシゴから右手を話し、顎のあたりにあて、ひねり出すように言う。
「ん~~。だってあたしもエレメントホルダーだし、わかる人にはわかるもんだと思うよ?」
「エレメント…ホルダ……?」
彼女の言葉から出てきた謎の新出単語に疑問符をつけて彼女に帰す。
「君…。自分の状況位しっかり把握したらどうかな……」
呆れ顔でそういわれる。
逃げるわけでもなく、大宮はハシゴを上り先程と同じ場所に座り直し、そこに椋もすわらせると、ある1つの話を語り始めた。




