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緑のフィールドが自然に黄と青に分かれ、それぞれのOLに吸収されていく。
空間から出ると同時に、癒されるというよりは少し気持ちの悪い感覚が全身を覆い、そこらじゅうにできていた痣をきれいに消していく。
『これは……いや…なるほど…だからか…』
と何やらフールが独り言をぼやいているが、こういう時の彼に説明を求めても何やら難しい説明が並ぶだけなのでまた今度聞くことにする・
またあの白い部屋へと戻ってきた椋だが、待ち構えていた山根はあまり祝福してくれそうな顔ではなかった。
「貴方ねぇ…やり方ってもんがあるでしょうに…。」
呆れが混ざったその声に、
「あれも立派な戦い方ですよ。自分は絶対やられたくないですけどね。」
と笑いながら返す。
しかし言ったとおり勝利は勝利だ。
0勝で帰るよりも多く勝って帰った方がいいに決まっている。
うんうん、と頷きながら先程の自分の行為を正当化していく椋だが、そんなのを無視するように山根が
「ほら、さっさと勝利報告でもしなさい。」
といい、彼女が職員用のOLをさっと振るとテレビの電源が入る。画面は6つに分断されており、左半分を大きく片山が、左半分は横長に4つ、上から、沙希、真琴、契、懋の顔がそれぞれ表示されていた。
4人は同じ場所に固まっているらしく画面の端にそれぞれがちょこちょこと映りこんでいる。
誰もしゃべろうとしない。お互いが画面を見つめ合っているのだが、だれからも言葉というものが出ない。
(さすがにあれはやりすぎたかな……)
などと思い始めたころに、ようやく沈黙を破る聞きなれた女性の声がスピーカーを通して聞こえてくる。
『とっ……とりあえずおめでとうね!椋!…いや…うん。おめでとう…。』
そんな沙希に続くように、皆からも次々と祝福の言葉が自分に向かい送られてくる。
しかし全員視線をそらしている。言葉で気もらってもこれほど心の籠っていない祝福は初めて受けた。
そして今頃になって自分の行為を後悔した。
「だって仕方なかったんだ!能力の相性悪いし……いや…だって…。」
もう言葉も出なくなる中、身振り手振りで何とか伝えようとしても何も伝わらない。
バタバタと椋が手を振る光景に、片山の固い顔から笑みがこぼれ、それが爆笑につながる。
5人が笑う中、片山が仕切りなおすように言った。
『どりあえずだ。一勝おめでとう、次も頑張ってくれ!』
そんな言葉につられるように、
『負けんじゃないわよ!』
『頑張って…』
『ファイトだぜ椋!』
と、ようやく祝福の気持ちがこもった言葉が皆から送られてきたのだった。




