11
「まずはみんな、入学おめでとう。私もあなた達に巡り合えて幸せです」
きれいな女性がにこやかな笑顔でここまで言うとなんだか怖くなってきてしまう。
山根美弥を見ているとそんな気がしてたまらない。
「今日はこの【麒麟第一寮】でのルールを説明しようかなと思ったんだけど、面倒くさいし、各自生徒手帳見といてください」
あまりにも適当すぎたため、むしろすっきりしてしまい、『部屋に戻ったら生徒手帳見よう。』という気にさせられてしまう。
いや、彼女に聞くよりも生徒手帳を見た方が正確な気がするからかもしれない。
会場がざわめく中、手をパンパンとたたき、会場を沈めるように、男の学生らしき人物が一人講壇に上がっていく。
山根に一礼すると、山根がにこっと笑顔を男に送りながら講壇から姿を消し、男は壇上の中央に移動する。
身長は180を超えるくらいだろうか、結構な巨体、かつものすごい筋肉質な体つきをしている。髪の毛は坊主頭で、見た感じではアメリカンフットボールの選手のようににも見えた。
「俺は3年の片山優介、この寮の代表生徒を務めさせてもらっている。とりあえず、みんな、入学おめでとう。そしてこの寮に来てくれてありがとう」
寮を選んだのはくじなので、実質的にこの寮を選んだのは椋達5人だけではあるが、それをわかったうえでの礼儀的一文だろう。
「まずは、この学園の寮制度の説明をしなければいけないな…。校長先生から聞いたとは思うが、たぶんあの校長はほんとのことを半分くらいしか説明していないだろうからな…」
片山は講壇の一番近くに座っている生徒に問う。
「寮土戦については聞いているか?」
との質問に生徒は首を振り、それを否定した。
なんだか名前から想像はつくが、あまり平和ではないイベントのような気がする。
「寮土戦、学生寮の領土を奪い合う戦闘の事だ。この学生寮は5つの大きなグループに分かれているのは知ってるな?そしてここに来るまでに、この麒麟寮の街並みを見ただろう。それぞれの寮の町があんな風にできているんだが、要はそれを奪い合うんだ」
と簡単に説明してきた片山に質問が飛んできた。
「これだけ店が充実していればそんなことをする必要ないんじゃないですか?」
との質問に、速攻で答える。
「良い質問だ。男子はよりおいしい飲食店を狙い、女子はよりおしゃれなブティックを求める傾向にあるからな。何せほかの寮への出入りは禁止されているからな」
結構適当な理由だが、それがこの学校を楽しむための要素なのだろう。
そう思い椋は片山の話に耳を傾けるのだった。




