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 「このOLには様々な機能がついてる。まずは学生証だね、これがなければ学園内の全施設利用不可だから気を付けて」

 「すべてって……」


 いちいち椋の驚く顔を見ていても話が始まらないので新田は続ける。


 「次は…そうだな、携帯との同期ができるかな。人工結晶(アクトマテリアル)製でも、電子機器の方でも簡単にできるからやっといたほうがいいよ」

 「人工結晶製ってことはこれも人工結晶なの?」


 新田は首肯をし続ける。


 「これは学園内の物だから市販されてる従来製の物よりスペックが桁違いのはずだよ」


 新田の口から出る言葉は椋の知らないことばかりだ。


 「学園内のと市販されてるのって何か違うの?」


 という椋の問いに、新田は不思議そうな顔を浮かべながら言う。


 「君の友達なら詳しいと思うんだけど、何も聞いてないの?」


 疑問に疑問で返されたが、頭の中で考える。自分の知り合いでそんなに人工結晶に詳しい者はいただろうか?

 

 新田が重たい体を持ち上げ立ち上がると、すたすたと歩いていき、部屋を出ると正面の部屋のドアをノックする。


 「永棟君!ちょっといいかな?」


 そんな声が聞こえた後すぐに、椋と新田の部屋に契と懋がやってきた。


 「何のようかな?」


 と契が新田に尋ねる。


 「辻井君にOLのこと説明してたらちょっとばかし僕には力不足かなって思ったからさ、ここは専門家に頼もうかと」


 新田の言葉が頭の中にめぐっていた。なんで契が人工結晶の専門家なのだろうか、そして初対面のはずの新田がなぜそれを知っているのか椋には理解できなかった。


 「なんで契が人工結晶の専門家なんだ?」

 「「「えっ!?」」」


 と椋の素の疑問に3人が驚きを隠せないような顔をしている。

 

 ゴホンッと新田がワザとらしく咳し、


 「ねぇ辻井君、初期の人工結晶の開発者の名前って知ってるかい?」


 すぐには答えが出なかったが、どうにか脳内を探り、答えを導き出す。


 「永棟久史氏!」


 と、勢いよく答えたものの、周りの反応が薄い。いや、呆れ顔になっている。

 少々困ったような顔をしながら、新田は契の肩を持ち、


 「彼のフルネームは?」

 「そんなの永む………え?えぇぇぇぇぇぇ!!」


 そんな椋の反応に対し、一切の否定をしない契が言う。


 「椋……本当に知らなかったのかい?永棟久史は僕の祖父だよ」

 「マジか?」

 「まじだね」


 驚きを超えて衝撃が止まらない。そして何より気がつかなかった自分が恥ずかしいのだ。


 「つ…懋はこのこと知ってたのか?」


 と懋に確認を取る。彼のキャラからしたら知らなくてもおかしくない。

 自然と同類を探していたのだ。しかしその幻想も打ち砕かれる。


 「俺っちは椋が気づいてない方に驚きだよ!さっちゃんもまこっちゃんも当然のように知ってるはずだぜ?」


 頼みの綱まで切れてしまい、椋は一人真剣に自分のことをバカだと自覚し、悔やんだのだった。

 


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