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椋が最後の一人と思われる男を軽く殴ると同時に、船全体にファンファーレのような陽気な音楽が響き渡る。
しばらくし5人の携帯が鳴り響くと、全員がそれを確認する。
残り人数5人、残りグループ“1”と表示されていた。
それを見るとみなが大きな息をつきながら、次々と能力を解除していく。
その中でも真琴は特に疲れているようで、大量の汗をかきながらその場にフラッと倒れこんでしまう。
一番近くにいた椋が真琴をやさしく受け止めると
「お疲れ様」
と静かに言う。
そのときにはもう彼女は眠ってしまっていた。
約一時間もの間、常に能力を発動し、なおかつ敵の気配に気を配り続けたのだ。
彼女自身も能力の使用は肉体的、精神的に消耗するといっていた。無理もないと思う。
この女子を抱きかかえているこの状態は男子にとって最高なのだが、今は隣に沙希がいる。
このままでは沙希からの椋に対する評価は“幼なじみ”から“ただの変態”に成り下がってしまう。
それだけは避けたいため、沙希にいう。
「沙希、真琴を頼んでいいか?」
「え?あぁ、うん」
彼女はそういうと椋の腕から真琴を受け取り、そのまま膝枕の状態に移り、地面に座り込む。
椋はというと、契と懋の方へ向かう。
「お疲れ様!」
という掛け声に反応した契が、椋に向かい右手をあげ、無言で返事をする。
「お疲れちゃん!!」と懋もしっかりといつも通り軽い返事を返してくれた。
そうしているうちに会場の端の方に固めて寝かしておいた他の新入生達が次々と目を覚ましていく。
人工結晶による第三のプログラムの強制起床だろう。
人工結晶の効果で気絶した人間をレクリエーション終了後に強制的に起こすためのプログラムだ。
最近は不眠症の人のためにこうした順番のプログラムを組んだ人工結晶が売られているとかいないとか。
真琴は自身の疲れによる睡眠なので結晶の効果は適用されず、すやすやと眠っている。
そんな中、会場外で気絶していたのであろう人が扉から続々と集まってくる。
大体の人が会場に終結したころに船内アナウンスが流れる。
【これにてレクリエーションを終了いたします。優勝はチーム27、ツジイリョウ、ナナセサキ、ヒイラギマコト、ナガムネチギリ、タグチツトム。脱落者0パーフェクトです。】
その放送を聞いた周りからは大量の拍手がわきあがる。
完全勝利だ。苦労した甲斐があるというものだ。
放送が途切れると、床下に収納されていた、食事や球形液晶など様々なものが元の位置に戻り、先程までとなんら変わらない元の風景に戻っていた。




