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11、港町での暮らし

 フィルランドにたどり着いてから2週間が経過した。私とゲオルグは、丘の上の一軒家で共同生活を送っている。


 丘の上から港町フィルランドまでは歩いて片道30分程度。私は毎朝起きると、買い物兼情報収集を兼ねて港町の市場へと赴く。市場は帆船が停泊している漁港近くの広場に設置される。


 朝の市場は普段はさびれた雰囲気が漂っているフィルランドでもっとも活気がある時間帯だ。


 朝市には、八百屋や肉屋、総菜屋やパン屋など港町にある店がさまざまな屋台を出す。


 島中からやってきた行商人が珍しい趣向品を広げた露店を出すこともあった。朝市では商品を片手にさまざまな会話が行き交うので、情報を集めるのには最適というわけだ。


 私は今日一日の献立を考えながら、両手いっぱいに食材を買い込んだ。


 お金は、逃亡の折にダグダから渡された資金を利用させてもらっている。


「フリッカちゃん!」


 大きく手を振ってくれたのは、さっそく顔を覚えてくれた八百屋のサーシャおばさんだった。


「お兄さんの容態はどうだい?」


「おばさん、ありがとう。今日はちょっとだけ調子が良いみたい」


「そりゃあよかった!これ持っておいき!滋養強壮に効く野菜だから」


「ありがとう」


 鮮やかな野菜の束を受け取り、私は満面の笑みで応えた。


 フィルランドに来てから、私とゲオルグは「兄妹」ということで話を通している。


 「体の弱い兄と彼に付き添ってきた妹が、空気の綺麗なフィルランドに滞在して兄の病を直そうとしている」というのがゲオルグが考え出した設定だった。


 こうしておけば2人で住んでいることも怪しまれず、ゲオルグが町に下りてこないことにも説明がつく。フィルランドの人たちも納得してくれたらしい。


 フィルランドは数時間あれば回ってしまえるほどに小さい町だった。


 たどり着いた当初はよそ者への警戒心も強く遠巻きに見つめられるだけだったが、最近は徐々に話しかけてくれる人も増えてきた。


 とはいえ、まだ完全に打ち解けたというには難しい。


 本来はもっと話をしてダナンの政局がどうなっているのか、王都からどんな噂が流れてきているのかの情報収集がしたい。けれどいきなり込み入った話をすると警戒されてしまう。


 町の片隅では住人たちによる井戸端会議が行われているのも見るが、そこに割って入るにはまだまだ時間が必要だった。


 そんな中で初めて打ち解けられたのが八百屋のサーシャおばさんなのだ。

 ここをとっかかりにして、交友関係を広げていきたい。


「しかしダナンはどうなってしまうのかねえ。まさか1年前に代わったばかりの王様が再び代替わりするだなんて……」


 八百屋のおばさんは頬に手を当てて、ため息を吐く。


 まさに今、情報を得るために今後の戦略を頭の中に思い浮かべていたところに、特大級の話が舞い込んできた。


「えっ!?」


(王様が代替わり!?)


「首都のほうは戦争中みたいな雰囲気になっているって商人が言ってたけど……フリッカちゃんたちはダナンランドにいたんだろ?何か知っているのかい」


 心の中では飛び上がって驚いているわけだが、ここではもちろんおくびにも出さない。


 もっと情報を引き出さねば。とりあえず、何も知らず困惑したふうを装い、両手を口の前で合わせた。


「いえ、私も兄と首都を出てしまってからは何も分からず……王様が代わったという話も初耳です。その話は本当なんですか?」


「あたしも通りすがりの商人から聞いただけだからそれ以上のことは分からないんだけどね。王様の代替わりの影響で物価高になったりでもしたら大変だからねえ。それに、また戦争が始まったら一大事だ」


「そうですよね。私も不安です。おばさん、また何か分かったら教えてください。兄にも教えてやりたいんです」


「ああ、分かったよ」


(現国王であるゲオルグが生きているにも関わらず代替わりだなんて絶対に正式な方法ではないはずなのに……。大々的に自分が王だとアピールして、無理矢理にでも名実共に手に入れてしまおうって寸法ね)


 行商人の店にも行ってみたが、趣向品は値段も高く、会話に入り込む余地もうまく作れなかった。


 食材も購入してしまったし、次回のチャレンジとしよう。今日は情報収集をいったん切り上げ、ゲオルグの待つ隠れ家に帰ろうと思い、町を後にする。


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