怖いもの
「ごめんなさい...うぐっ...うぅごめんなさい...」
「大丈夫...俺は絶対に美神のそばにいるから...心配しないで...怒ってないから」
輝の胸の中で泣き続ける美神を輝はただただ暖かく迎え入れた。
涙でクシャクシャな美神を子供をあやす様に対応する。
いつもの美神ならきっと怒るのだが今日は素直に、なんなら甘えるような仕草で迎え入れてくれた。
「...美神...安心してね」
「うぅ...ごめん...輝...」
「美神は良い子だ...だから安心して」
輝はそう言うと美神の髪を静かに割れ物を触るかのような優しい手先で撫でてみた。
輝の知識だと女の子の髪は命と同等くらい大事なためとても繊細に扱わなくてはいけない。
頭を撫でた時一瞬体がピクっと動いたが動いたのはそれっきりでそれ以降は...
「スースー...スースー...スースー」
「寝たか...良かった」
美神の意識はついに限界を超えたのか眠りについてしまったのだ。
規則正しい寝息であまり見かけない美神の顔。
そして先程からずっと腕に当たっている胸、全てが輝の脳に情報として送り込まれた。
そうなると脳がキャパオーバーしてしまいそうだが輝も疲れはあるため軽く眠りにつくことにした。
「俺も寝るか...おやすみ」
2人だと広く感じた病室内には物音ひとつもしないくらい静かになりあるものは鳥の鳴き声と生活雑音だけだ。
緊張の糸が解けてしまった者同士静かな部屋で眠りに落ちた。
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最初に起きたのは輝だった。
「...というか良い時間だな...」
輝は窓の景色を見ながら軽く呟いた。
外は若干日が傾きつつある。
夏場とはいえ夜になるのは遅くは無い。
そして美神は前回のような事件に巻き込まれる可能性もゼロではないことがあの美神にとっては忌々しい事件で理解出来た。
そのためここで美神を家に返すのが輝の中での殊勝な選択なのだ。
そのため今現在輝の腕を持ちながら眠むている人を起こさなくてはいけない。
「美神...そろそろ」
そう言うと美神は目をパチパチとして開けた。
まだ寝ぼけているのか辺りをキョロキョロと見回す。
一通り見回した後に美神は少し恥ずかしさがあるのかモジモジとした雰囲気で輝に話しかけた。
「...輝...良かったらで良いのだけど...私の手を握って...」
「こう...か?」
「うん...」
美神は帰るよりも手を握ることを望んだ。
美神の手、輝の手に比べると小さく暖かい。
その暖かさが癖になりそうな愛らしさを感じる。
輝もまさか美神が真正面から甘えてくるとは予想もしていないことなので少し顔を赤くしながらいつもの雰囲気を取り繕っていた。
「...ありがとう...輝」
美神の顔を見ると真っ赤だ、そして声も小さい。
その点から導き出される結論は美神は恥ずかしがっているという事実だ。
そう思うと美神に対しての擁護欲というものが生まれるがその欲よりも自分の邪な欲の方が強いため掻き消されてしまった。
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突如ドアが開いた。
今輝と美神はバレたらとても恥ずかしいことをしている。
そのためこの場でのバレは...
「あら、私たちはお役御免だったみたいだね」
「お兄...ごめん!大事な時に邪魔して」
来たのは明子と渚だ。
今現在輝が面会に来て欲しくない人の2人が来るとは思いもしなかった。
だが輝と美神は恥ずかしさで顔を真っ赤にしかすることが出来ず。
「...ごめん...」
輝はその一言呟いてフリーズした。
((このタイミングで来るのかー))
2人の心理が初めて一致した瞬間である。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




