雨宿り時々室
早く終わった仕事だがその仕事は簡単なものばかりでは無いため輝達にも疲れがある。
輝と美神はほとんど同時に体を大きく伸ばしてリラックス体制に入った。
2人は隣同士で座っていたため多少見えないとはいえ少しは見える、輝と美神はまたも同じタイミングで視線をお互いに向けあった。
「...」
「...」
2人ともなんとも言えない恥ずかしさのせいで顔を赤くしてしまった。
「...輝...少し雨酷いしここで雨宿りがてらなにかする?」
「...なんかとんでもないことにしか聞こえないのだが」
美神の表情を見ると純粋な目なので確実に輝の思っているやましい気持ちなどどこにもないのだろう。
そうわかってくると自然と輝の中には罪悪感が生まれてきた。
この輝の下心が美神にバレたのか急に顔を赤くしだし野良猫の威嚇のように怒り出してきた。
「わ、私がそんなことするわけないじゃない!妄想も甚だしい!最低!」
「そ、そんなセリフを言った...負けた...」
美神が純粋な意味で言ったことをあらぬ意味を持っていると誤解した時点でこの勝負に輝は負けていたのだ。
そのため美神に散々な事を言われても甘んじて全て受け入れるしかできない。
「...でも輝なら...」
いつもの美神の小声のデレだ。
今回もだが輝はきちんと聞き取れた。
だが内容が内容なため美神は顔を真っ赤に少し俯きながら言った。
しかしここでニヤついてしまうと本当に犯罪者のレッテルを貼られてしまう。
輝は自身の唇を噛みながらなんとかの思いで素の自分になりきった。
「なんか言ったか?」
「うっさい死ね!」
「えぇ」
あまりにも理不尽なキレで輝も素の自分が隠しきれなかった。
美神は顔を梅干しの如く真っ赤にして輝の反対方向にぷいっと向いた。
だがその仕草が可愛いため理不尽に怒られたショックが増えることは無さそうだ。
.................................
輝は生徒会室から外を覗くが灰色の空の雨が止む気配は全くない。
だがさっきから雨が強くなったであろうことも無いためもしかすればすぐに止むかもしらないという希望が生まれてきた。
美神はずっと自主勉を行っている。
雨音にも屈せずそのペンは止まることを知らないぐらいずっと動いている。
これが学年一をキープし続ける秘訣なのだと思うと尊敬の意しか出てこない。
「...さっきから何見ているの?」
美神が突如ペンを休め輝の方を見つめた。
突然の質問で輝は若干オドオドしかけたが
「いや、さっきからすごいなと思って...」
輝は素直な思いを吐いた。
下手な言い訳よりも真面目に言った方が相手もこちらも悪い気持ちにならない。
「......こうでもしないと落ち着かないの...」
美神は先程までよりかは顔は優しくなったが次は顔を俯いて答えた。
だが言い方といい内容といいどこか悩みがある言い方だ。
ここで輝はひとつ質問を仕掛けることにした。
「...なぁ...夢はあるか?」
「夢なんてないよ」
美神の回答はとても早かった。
どこか投げやりな感じなのが輝からでも伝わってくる言い方なのでさらに深追いすることにした。
「...親のことか...」
そうつぶやくと美神の体は大きかぶるっと震える。
きっと輝の質問が図星なのだろう。
美神は明らかに先程までの余裕ある感じは消えやっと年相応の人間として接せれる。
「...どうしてそこまで分かるの...」
「なんでだろうな...でも...美神ってわかりやすいしそしてどこか放っておけないんだよ」
初めて輝は美神に対してずっと思っていた本音を初めて話した。
美神はどこか見ているだけだとすぐに消えてなくなりそうなオーラがある。
それが怖いのだ。
本音を聞いた美神は少し涙を目尻に浮かべながらも顔は驚きのせい顔が固まっていた。
「本当に...輝って...おかしな人」
ついに美神が優しく口を開けた。
顔を見るとどこか何かを振り切ったのか目がどこか活き活きしている。
(本当に輝っておかしな人)
「なんだよおかしな人って?」
「教えないよー」
「あぁー!ずるい!」
「教えないよー」
輝と美神の仲の良さそうな傍から見れば痴話喧嘩のような会話は少しの間続いた。
美神は自分が思う数倍いや、数十倍も人生を変えるくらい大きく変わった。
何も面白くなかった白色の人生に輝という最初は小さく美神から見れば薄い色から始まった青春という人生の分岐点、その色が思い出というカラーパレットの色と合わさりたくさんの色を作っていった。
辛い色もあれば明るい色もある、そのくらい今はカラフルで充実している日常だ。
今となれば妹よりも輝の方が大切だと思う時がある。
それくらい美神は変わった。
輝という色、いや美神から見れば人生という暗い一本道に突如降り注いだ明るい一筋の細い光の力により。
(本当に...おかしな人...私たちって...)
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




