焦り時々誘い
「輝・・・調子は良さそう?」
時間は放課後。
人は全く居ないこの手の話をするにはふさわしい場所だ。
「・・・どちらかと言えば友達になった・・・うん、進展は・・・少しした」
美神が行う定期報告が始まった。
美神は腕を組み覇気を放っている。
その覇気に怖気付いたのか輝はバカ真面目に答えてしまった。
もちろん美神の目は完全に火がともされている。
その覇気のせいか輝の声はどんどん小さくなっていく。
「・・・ま、まぁ・・・進展ゼロに比べたらマシマシ」
この空気を変えるためにも少し調子乗った言い方で美神にそう言った。
だがいつもならキレそうだが今回は違う。
「・・・それもそうね・・・期間はまだ十分あるし私を頼っても良いのよ?」
「そりゃ頼もしいな」
何故か知らないか美神が大人しい。
(・・・あれ?まさか俺・・・呆れられた?)
この大人しさ、すぐに引く潔さ。
今までの美神の性格ではありえないことだらけだ。
そうなると美神の心境が大きく変わったのだと思う他ない。
もしかすると美神は輝を見捨てたのか・・・そう思ってしまう。
「・・・美神・・・ま、まぁ俺が何とかするよ」
「わかったわ・・・頑張って」
美神がそう言い残すと教室から出ていってしまった。
だが今日はその後ろ姿がいつもみたいに近い姿には見えなかった。
どこか遠く・・・手の届かないような儚さがある。
そう思ってしまう程の美神がよそよそしい反応だ・・・
こうなれば・・・
(美神と帰りどこか寄るか・・・)
まだ美神は帰りの用意を持って教室から出ていないため輝は教室の中で待機することにした。
夕日が教室の中を少し切なく照らしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うぅ・・・なんで・・・なんでいつもの対応ができないの!」
美神は教室を出て人通りのない廊下で悶えていた。
明かりが夕日だけなので辺りが真っ赤に染まっている。
その空間で美神は頭を抱えながらくるくると少し落ち着きがなく回っているのだ。
「・・・うぅ」
美神自身なぜ自分があそこまでよそよそしい態度をできるのか不思議で仕方ない。
何故か知らない心が締め付けられるような気持ち・・・
「私が輝に・・・いやいやそんなことは・・・」
一瞬美神は自身が知らず知らずのうちに嫉妬をしているのかと思った。
しかし認めたくない。
いや認められないのだ。
(私が・・・私なんかが・・恋しちゃって・・・)
時折家でも輝のことを思う程美神は輝と仲が良い。
だがこれは美神からしてみれば友情的なものだと思っていた。
厳密に言うと決めつけていたのだ、もしここで自身の気持ちが本当に嫉妬だとしたら・・・
もしそこから友情に亀裂が入れば・・・
また美神は1人になる・・・
「うぅ、だから私は恋をしないのに・・・なんなのこの気持ちは!」
そのため今の美神は嫉妬以外でこの気持ちを証明したい。
「私は・・・嫉妬をしない!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
五分くらいすると美神が教室に戻ってきた。
だがまだ少しよそよそしい態度だ。
「大丈夫か?」
「ええ、トイレに言ってただけよ・・・それよりもう帰らないと」
どこか美神は焦っている。
この教室から早く出たいと思われても仕方のないくらい動作が焦っている。
「待ってくれ美神!」
「え?ええ」
輝が突然美神の名前を叫んだ。
勢いに身を任せたからか輝は席から立ち上がっている。
いつもならしなさそうな行動なので美神はもちろん驚きを顔からも心からも隠せない。
「良かったらコンビニ寄らないか?」
「え、ま、まぁ良いわよ」
少し素の美神が現れていたため輝はこの選択を選んだ達成感で胸がいっぱいだ。
「・・・だから待ってて」
「え、えぇ」
今日の輝はどこか押しが強い。
美神は胸が止まらないせいか出る言葉もどこか幼稚なオーラが出ている。
少しここまで必死なのは中々見ないから嬉しいのもある。
(中々こんなに焦っている輝見れないわよね・・・)
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




