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損時々本音

「私の答えは・・・まだ・・・居たいです」


「そうよね・・・」


予測通りと言えば予測通りの結末だ。


人は1度手に入れた幸せは離せない。


「・・・それは分かっていたのよ・・・でも・・・どうやって親に言おう・・・」


美神は一回転しながら考えた。


だが答えが浮かぶ訳もなく。


「この答えが分からないの・・・」


美神は素直な弱音を吐いた。


顔も悩みのせいかどこか疲労が溜まっている感じが伝わる。


あまり弱音を吐かない美神だが今回は吐いてしまった。


茜の幸せを美神は願っている、だが美神も自身のエゴであるがこの生活を失いたくない。


その気持ちは茜だって一緒だ。


もう姉妹同士で離れたくない。


「・・・なら・・・俺を頼れ」


「え・・・」


美神と茜、沙也希でさえも輝を見てしまった。


肝心の輝は普通の顔をしている。


突然のジョーカーのような登場をした輝の行動は終わらない。


「・・・俺は美神の青春を変えるって約束しただろ・・・確かに家庭内でのいざこざで俺が入る話なんておかしい話だ・・・でも守りたい・・・俺だってこの生活が幸せなんだ・・・だから守りたい」


輝はそう自信たっぷりな声でみんなに伝えた。


この話を聞いた美神と茜は不安そうな顔をしている。


事実輝だって自信満々なわけが無い、むしろその逆で自信が全くない状態だ。


(そりゃ怖いよ・・・だって相手は有名会社の偉いさん・・・ひとつどじれば俺が終わる・・・でも守りたい・・・その気持ちは変わらない)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「もういいのか輝?」


家に帰ろうとしていた輝を沙也希は呼び止めた。


沙也希は少し寂しそうな顔だ。


結局輝は茜との件が終わるとすぐに帰るのが理由だろう。


「ごめんな沙也希、今日は迷惑かけて」


「気にしないでいいよ・・・美神さんも帰るみたいだし」


そう沙也希が言うとが沙也希の後ろからひょこっと美神が現れた。


その姿が少し可愛かったのは言うまでもない。


「わざわざありがとうございます、お邪魔しました・・・」


美神はそそくさと沙也希の家を出た。


だが家の外に出る前輝に「後で話がある」と目で言われた、だいたいどんな内容かは想像が着くが・・・


「じゃあ沙也希、ありがとう、茜のこともよろしくな」


「わかってるよ、バイバイ」


別れの挨拶を済ますと輝は颯爽と家を出ていった。


少し寂しそうだがすぐに会えるので輝はあまり惜しい気持ちはなく去っていった。


アパートの2階なので少し階段を降り1階に着くとアパートの特徴でありそうな大きな柱を背もたれに美神が立っていた。


待ってましたと言わんばかりな顔で輝を見つめている。


「どうしたんだ?美神・・・」


「輝・・・さっきのことはどういうことなの?」


予測通りと言えば予測通りだ。


声や目が怒りを含んでいるのが見てわかる。


「・・・言った通りだ・・・作戦は直談判だ」


「そういう事じゃなくて・・・」


やはりだが話を変えられてしまった。


予測はある程度着いてはいたが。


「私はなぜ輝がここまでするのか知りたいの・・・本当の理由を」


「本当の理由は言った通りだ、約束を果たすためだ。それ以上もそれ以下もない」


輝はそう言うがなにか美神は輝が隠しているとしか思えない。


話す時少しだけだが目を開けるスピードが速い気がする。


だがそれはいつもの時の場合であり今の美神にそんな冷静なことが伝わるわけが無い。


「それだと輝には何もメリットがないじゃない!」


美神は輝がただ損をするだけなのを知ってしまっていた。


この件から身を引いても輝にはダメージはない、だがミスってしまえば大きなダメージを負うことになる。


どう考えてもメリットなんてない輝に美神は不気味さすら味わう。


だが輝は


「俺は・・・美神との約束をただ遂行するだけでいると思うか?本当のことを言うと、俺も美神といる時間が楽しい・・・だからあんなことはただの恥かくし・・・」


ついに輝は告白した。


輝も恥ずかしいのか顔を俯かせて隠している。


だがそれでもなお顔が赤いのがバレるくらい赤い。


「っ〜!?早く帰るぞ」


輝は照れ隠しのせいで早く早くと沙也希宅を後にしている。


(可愛い)


輝が普段見せない照れは美神にはとても心に焼き付く光景だ。


守ってあげたくなるような可愛さが今の輝にはある。


だがそれでも美神の心にはその可愛さを超える気持ちがあった。


何故か知らないが今日だけ・・・


今日だか輝の後ろ姿が・・・


とても男前た気がする・・・


日が良い感じに輝に当たっているからか?その点は分からない。


「どうした?早く行かないと、夏場はすぐ暗くなるから気をつけないといけないぞ」


輝が振り向きざまにそう言った。


(そうか、私、こんなところがあるから輝のことが好きなんだ・・・頼りなさそうに見えて本当は頼り甲斐がある・・・)


やっとわかった。


自分の気持ちが・・・


「ほらー、早く早く」


輝の催促の声が聞こえるがそれよりもこの胸のざわめきが落ち着かない。


恥ずかしい、認めたくない・・・でも事実。


(わたし・・・輝のこと・・・)



ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)

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