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過去時々優しさ

諸事情により1話投稿です

「相変わらずだが慣れないな」


輝と美神はオシャレなカフェの1席にいる。


だが明らかなオシャレさを醸し出させる雰囲気に周りの人の雰囲気にどうにも慣れない。


「美神はどうだ?良いかここ?」


「えぇ、私も輝と同じよ、どこか慣れないわ」


美神も言動的に大人しくなっていたのでもしかすれば慣れてないのかと思っていたら本当に慣れてないみたいだ。


「・・・でも美味しいわ」


「それは分かる・・・」


コーヒーは飛びっきりに美味しく飲む手が止まらない。


さすがは大人気チェーン店と言うべき美味さだ。


「で、どうしたい?俺は美神の言うことは聞くよ」


輝はやっと本題に入れた。


慣れなかった雰囲気に少しづつだが適合しつつある。


優しく問いつめる感じで輝は聞いた。


美神の顔を見るとまだ上手く定まっていなさそうな顔だ。


「……少し過去の話をしていい?」


「……どうぞ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


美神は元は海外住みだった。


それは親の会社の都合海外に住むことになっていた。


美神の暮らしはとても快適だ。


不便なことなどは無い。


「美神、お前の出来の悪さは思った以上だわ、ここに居ることすら反吐が出るわ」


「すみません・・・今度からは気をつけます」


「また今度今度って!」


いつもの事だ。


美神は諦めていたのだ。


親が変わることは無い、だから自分を変えなくちゃ、親に好かれるような人に。


その一心でただただ生きてきた。


しかしある人だけは違う。


私にも優しく接してくれる人、私の妹こと茜だ。


私が辛くて泣いていてもヨシヨシと頭を撫でてくれたりおやつをおすそ分けし合ったり。


私と茜はとても仲が良かったのだ。


多分茜がいなかったら私は・・・


でもある日。


「美神の出来の悪さにはとことん呆れたわ」


またいつものように貶された。


だがもう心が傷つくなんてことは無い。


どうせいつもの事。


そう思い聞いていた。


「だからあなたを追い出します・・・家は日本にあるのでそこに住んでください」


何を言っているのかさっぱりだ。


頭が働かない。


「う、嘘・・・」


「もう今すぐ行ってもらいます、早く用意をして車に乗って・・・」


辺りが真っ暗になるとはこのことを言ったのだろう。


そう察しがつくくらいには絶望していた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


美神は母の言う通り荷物を持ちこの家から出ようとした。


もう心はぐしゃぐしゃに捨てられた紙みたいな気分だ。


だがそんな日でも外はとても眩しく明るい。


「・・・なんで私ばっか・・・」


日本に行かされる、ということは茜とは会えない。


その寂しさもあれば新たな環境で1人の不安もある。


そんな暗い気持ちを胸に家の階段を降りていると


「お姉ちゃん!待って!」


「茜・・・どうしたの」


茜が美神の後ろを走って着いてきた。


よく目を見ると茜の目に涙が浮かんでいる。


(こんな私でも寂しいと思ってくれる人がいるんだ・・・)


そう思うととで嬉しい気持ちでいっぱいだ。


自信なんかつけない空間で生きてきて唯一美神であることを褒めてくれたことに自然と涙が出こぼれ落ちそうだ。


「・・・大丈夫・・・いつかきっと帰って・・・来るから!」


声が震える。


最後くらい笑顔で行きたいのに。


「うん!約束!後これを持っていって」


だが茜の震えた声であるものを美神に手渡した。


渡されたものを見ると紙切れが手のひらにあった。


その紙を見ると


「・・・『姉妹の証』って?」


「例えどれだけ遠くに行っても私たちの絆は断ち切れないから!お願い・・・笑顔で行って」


茜は後半から耐えなくなったのか声が震えなんなら涙声に近い。


その声に美神も耐えていたものが崩れたのか涙がポロポロと落ちてきた。


「あはは・・・なんで流れるんだろう・・・いつかきっと・・・帰ってくるから!」


「約束よ!」


最後は涙の別れとなってしまったが・・・多分この別れがなければ永遠に美神は苦痛な一生を送っていただろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・だから私は茜の思う通りにしたい・・・」


「・・・よく耐えたな・・・」


「え?」


全てを話終えると輝は大きくそして温もりのある手で頭を撫でてくれた。


考えを言うのではなく真っ先に出た言葉は・・・美神に対しての気持ちだ。


「よく耐えたな」という言葉に若干疑問があるがそれよりもなにか大きな感情が湧いて出てきた。


「・・・うぅ・・・輝ぃ〜・・・少しだけ・・・泣いていい?」


「目は泣くためにあるんだよ・・・泣け」


なにか大きな物が肩から外れた気分だ。


自然と心が軽くなっている感じがする。


風船のように軽い感じだ。


輝は泣いている美神をあえて見ないようにしてくれた。


きっと見てしまうと美神が心から泣けないと思ってでの行動なのだろう。


だがまずカフェなのであまり大声では泣けない、すすり泣くような声でしか泣けないのが辛い。


でも端の方なのでバレないのは良いかもしれない。


(なんで・・・なんで・・・なんでこんなに優しいの!輝は・・・好きに・・・なっちゃうじゃない・・・)


この時大きく気持ちが揺らいだのは言うまでもない。

ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)

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