オシャレ時々不安
現在時刻3時50分。
美神が提示してきた駅に輝は着いていた。
駅と言っても駅の入口のところだ。
時間的にも帰宅途中のサラリーマンやクラブ帰りの学生などで溢れかえっていた。
何度も何度もあまり進んでいない携帯の時刻を見続けながら美神を待っている。
(暇だ・・・暇だ・・・)
そんなことを思っているとどこからか見覚えのある人影が見えてきた。
辺の人の目を奪いながらある姿は女優さながらの美しさがある。
「美神、突然呼び出して何の用だ?」
「えぇ、その特別・・・重大な用ではないのだけど・・・」
どこか美神の様子がおかしい。
何か隠している感じがするのが見て取れる。
「・・・隠してるな・・・」
その時美神はビクッと体を動かした。
どうやら図星なようだ。
俯いていた顔が輝の方へ向き始めた。
「・・・その・・・来たの・・・電話が」
「電話?」
何のことか全く分からない。
その事が美神にも伝わったらしく
「私の親から・・・私の妹が逃げたと・・・もし見つからなければ私を連れて帰るって・・・」
「・・・そうか・・・」
輝は考えた。
(美神・・・そんなのは愛情では無い・・・)
「それで私どうしたら良いんだろうって・・・」
美神の声が震えてきている。
体を見ると何か大きなものを頑張って耐えている感じがひしひしと伝わってきてその度に輝の心が痛む。
「・・・お前が苦しむ必要は無いんだ・・・そんな愛情は愛情って言わない・・・あの時・・・妹と出会った時の言葉を聞いて俺は大変心が痛かった・・・お前にはそんな辛い思いは似合わない、お泊まりの時やプールの時みたいに笑ってるのが1番だ!」
輝はズバッと思ったことを言った。
だがこの手のセリフは後から恥ずかしさが込み上げてくるもの。
もちろん輝も例外ではなく恥ずかしくなってきたのは言うまでもない。
「・・・あ、待って待って・・・恥ずかしい・・・」
輝は顔を赤くし自然と美神のことから目を離した。
今の輝では恥ずかしすぎて目すら見れない。
「・・・ふふふ・・・相変わらず柄にもないことをズバズバと・・・ありがとう、本当に助かるわ」
美神も照れているのか声が途切れ途切れで聞こえてくる。
だがその言葉にはいつもみたいなトゲが何一つもない。
あるのは純粋な気持ちだけだ。
輝もそろそろ目を美神に合わせた。
美神は予測通り顔が真っ赤になり俯いている。
「美神こそ柄じゃないセリフだな・・・」
「あら、失礼じゃない?」
「そうかもな」
「「あはははー!」」
こんな何気ない会話が永遠に続いて欲しい。
こんな何気ないことで笑い合いたい、永遠に。
こうして永遠過ごしていきたい。
どれもこれも美神にとっては宝物のひとつだ。
それが失われようとしているのが今の現状だ。
「・・・こんなことで永遠笑い合えれば良いのにね・・・」
「・・・たとえどこに行こうとも俺は美神のことを永遠に友達思っているからな」
美神はまた顔を赤くしてしまった。
(さっきから柄に合わないことを・・・本当に・・・本当に・・・なんなのよこの胸のざわめきは!)
美神は初めて胸のざわめきというものをこの場で知った。
胸のざわめきがうるさい。
輝の言葉が聞こえないくらいうるさくそして激しく、テンポが早くなり続けている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2人は場所を変え近くのカフェに移動した。
カフェは有名なオシャレチェーン店として名を馳せているカフェだ。
だが2人とも奇跡的に行ったことがないためどうすれば良いか分からない。
「・・・とりあえずコーヒーを頼むか?」
「そ、そうね」
2人とも経験不足のためか全くと言っていいほど列に並べず2人揃ってずっとメニューの看板を見ているだけだった。
「・・・そろそろ並ぶか・・・」
ついに輝は重い腰を上げレジの方へ進んで行った。
美神は別のところから暖かい目で見守っている。
(見てるだけじゃなかて来てくれよ!)
しかし輝の心の中の悲痛な叫びが聞こえるはずもなく美神は見続けている。、
輝も諦めがつき普通に買うことに専念することにした。
「コーヒーを2つお願いします」
「ではトール、スモール・・・ホットかアイス、どちらにいたしますか?」
「あ・・・えっと」
分かるかよー!と叫びたくなるほどの専門用語の多さ (輝調べ)
この時点で頭がやられそうだ。
「じゃあ、アイス、サイズはスモールでお願いします!」
「は、はい」
輝の迫真の注文に店員は押されてしまった。
その反応で輝も焦りが生まれてきたのは言うまでもない。
(もう、カフェは・・・ゴリゴリだ・・・俺の家カフェだが)
当分オシャレな店には近づかないことを決意した!
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




