アスレチック時々絶望
「いっけー!」
輝はついに最後の丸太から飛んだ。
その姿はまるで鳥のように。
(これは確実に勝った・・・長かった)
苦節5分間ぐらいの間だったがもう既にクタクタだ。
美神の顔も笑顔になっている。
だが後にその笑顔の真の意味が分かることはこの時の輝は知る由もない。
「これでー・・・ちょっとととと・・・」
輝は気づいてしまった。
(ギリギリ足りないじゃねぇかーー!)
このままだとプールの中にドボンだ。
(だからあいつあんだけ笑っていたのか!くそぅ!)
この時美神の笑顔の意味についてわかった。
相変わらず良い性格をしているぜ。
しかしまだ策はある。
(まだここから走り幅跳びのように前傾姿勢になれば・・・もうやるしか!)
輝は間に合うのか危うい賭けに出た。
成功すれば拍手喝采、ミスをしてしまえば笑いもの。
この事実が輝を強くしてくれた。
(お、これだと・・・行ける!)
着地地点はかなりギリギリになるが地面。
だがその事実だけでも嬉しいものだ。
「いけぇぇぇー!」
後は運、だがこのままぼーっとができないからか輝は声が出た。
この間の時間が輝にとってはとても長く、そして苦痛に感じた。
「っしゃー!」
輝の足が地面にギリギリだが触れた。
ということは輝は耐えたのだ。
「ほら見たか!みか・・・おっととと」
しかし輝は一つ詰めが甘かった。
(やべぇこの後のこと何も考えてなかった!)
ギリギリで着地するのはわかっていた、しかしそれでも本当に着地できるのかと疑問視していて最後まで着地後のことを考えていなかった。
それにより輝は着地の衝撃が全て後ろ側に来たのを感じる。
「ま・・・て!」
バシャーン!
激しい水しぶきが辺りを濡らす。
この水は輝の精神のように綺麗にそして無造作に当たりを飛び回った。
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「あはは・・・面白いわ」
「くそぉ・・・」
輝は恥ずかしさでいっぱいだ。
もちろん美神はとても笑顔で笑っている。
そこに馬鹿にしているといった負の気持ちは無さそうだ。
純粋に笑ってくれている。
だがその瞳が逆に心をえグリに来ているのだ。
「だ、だって見たかって・・・その後にハハハ・・・落ちるなんて・・・ハハハ!」
「絶対美神ガミスった時に笑ってやるからな」
やっぱり馬鹿にしていないは間違えのようだ。
純粋な気持ちで馬鹿にするという1番邪悪かもしれない煽りを受けた。
輝からしたら屈辱以外の何物でもない。
「お、これで終わりか・・・長かったー」
ついに目の前には輝は気づかなかったがゴールといった字がある。
さっきまでの恥と屈辱の気持ちは綺麗さっぱり波打ち際の砂のお城のように崩れ去った。
だが美神はどこか不安そうな顔をしている。
「・・・どうかしたか?」
「ここから泳いで帰る感じなの?・・・」
輝は辺りを見回したが出口に向かう道がない。
輝は何となく最悪の展開を想定してしまった。
「・・・ハハハ・・・嘘だ・・・」
「これもう1回やって帰る感じなの・・・」
どこをどう見てもある道はさっき輝が通ってきた道のみだ。
これでやっとわかった。
「「2周するのー!」」
2人はほとんど同時に叫んだ。
絶望の叫びだ。
またあの厳しいアスレチックをするという。
「で、でも体が覚えてくれている・・・とりあえず行くか」
輝は逆に良い考えを考えた。
そう思わないとやってられないからだ。
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10分くらい経った。
2人はついにこのアスレチックから出ることに成功した。
「はぁー・・・もう当分アスレチックはやりたくないな」
「まずアスレチック自体あまり見ないわよだから安心・・・」
輝と美神は2人とも大きめの人形のように俯いてしまった。
疲れからか全く力がわかない。
「・・・とりあえず休憩するか」
「そうね」
2人は今共通の気持ちを持っている。
(当分アスレチックはいいか・・・なんなら当分体動かしたくない)
今日はよく眠れそうな日だ。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




