アスレチック時々水しぶき
第1コース。
小さな地面をつたって大きな地面のある場所まで向かう。
ビニール製でとても滑りやすい。
輝はお得意の運動神経で行けなくは無いが問題は美神だ。
「……美神……行けそうか?」
「い、いけるわよ!」
美神は自信ありげな言い方で言ったものの声は震え目には自身のじの字すらなさそうな目だ。
「そうか、もしやばい時は頼ってもいいんだぞ」
「え、えぇ!」
いつもなら「そんなの必要ないわ」とか言うが今回は素直に認めた。
美神の精神はかなり追い詰められていた証拠なのが受け取れる。
まず輝が第1の足場に足をつけた。
予測通りだがかなり滑りやすい。
「おっとと、こりゃ危険だな」
ビニール製の床と水が最悪なコンビネーションを生み出しとても転けそうになる。
そして美神を見てみるとかなり不安そうな目だ。
「美神!行けるか!」
輝がそう叫んで聞いてみると美神はハッとした様子になった。
「い、行くわよ!」
投げやり気味だが美神は輝の居る足場に足をつけた。
輝は美神が無事行けそうな気がしたため邪魔にならないようにこの場から離れようとすると美神の様態が変わった。
「きゃ!きゃァ!」
「美神!」
美神がまさかの足場で滑ってしまい転けそうになった。
輝は何故か知らないが体が勝手に動き出し手を伸ばす。
だがもちろん美神に届くはずもない。
バシャーン!
派手な水しぶきが吹き飛んだ。
「ハァハァハァハァ……ごめんなさい輝……」
「大丈夫だよ……とりあえず進めるか?」
美神はびしょ濡れの体をなんとかの思いで足場に動かし聞いた。
輝はもちろん行けると言ったが美神の様態の方が気になってしょうがない。
「大丈夫よ、進むわ……わぁー!」
美神がまた1歩前進する度にプールの中は落ちてしまった。
再度大きな水しぶきを上げまた足場に体をあげる。
「……美神……」
「大丈夫よ!」
輝が言い切る前に美神は輝の質問に答えた。
顔を見るとびしょ濡れだが恥ずかしさのせいか顔が真っ赤だ。
(まぁ大丈夫か)
しかしこのとてつもなく甘い判断が危険だった。
美神にとって。
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「……あぁ……美神……生きてるか」
「勝手に殺さないで!……生きてるわよ」
輝は四つん這いになって倒れている美神に声をかけた。
美神はあの後落ちて戻ってきてを足場の数行った。
結局1度も水に落ちることなく足場に渡りきれず終わりを迎える。
その恥ずかしさのせいか顔が真っ赤だ。
「とりあえず第1コースクリアだな……」
「そ、そうね……次は……」
その時美神は絶望した。
またあの悪夢の足場乗り移りコースということに。
顔が真っ青になる感覚とはこういうことなのだと初めて理解した。
「……あ、ど……どんまい」
美神の顔色の悪さが気になり輝も美神の視線の方を向くとあの美神にとっては悪夢のコースなのでその一言しか出なかった。
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「じゃあ次は俺が後ろ行くから美神が前に行くのはどうだ?」
「私が前?」
輝は一つの策を練ったのだ。
その策のために美神には前に行かなくては行けない。
もちろんその策を知らない美神は疑問する。
美神は頭に疑問符を乗せて顔を傾けた。
「後ろからアドバイスを入れたりすれば行けるだろ……そう言うことだ」
「……わかった」
さっきの屈辱のせいか美神は以外にもすんなりとこの策を認めた。
いつもならこの手の策には乗らないがさすがの美神も今回限りは乗った。
足がガタガタに震えながらもまず1歩前へ進んだ。
「よし!美神、このまま体を持っていけ!」
「よ、よし」
美神はガタガタに震えた足1本で体を持っていこうとした。
しかしもちろんながら端の方は危険だ。
「美神!もう少し前に進むんだ!そんな前に進んでも落ちない!」
そう輝が叫ぶとその言葉を聞いた美神は一気に前へ体を押し出した。
しかし勢いの強さのせいか
「ぎゃぁー!」
バシャーン!
また大きな水しぶきを上げた。
「……あー……その……美神」
「……」
美神はまた水にぷかぷかと浮かんでしまった。
美神の怒り混じりのジト目が輝の心をえぐりに来る。
(確かに悪いけどさ……)
輝はこの時変な説明はしないでいこうと決意したのだ。
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