ウォータースライダー時々照れ
美神は流れるプールに満足したらしく満面の笑みでプールから出ていった。
その表情に輝は安心感がある。
「じゃあ次はウォータースライダーでも行くか」
「そうね」
輝も美神もさっきまでの照れはどこか遠くに過ぎ去り2人とも今はプールという娯楽に完全に心奪われてしまった。
ノリノリの2人はかなり並んでいるウォータースライダーの列に並んだ。
もちろん浮き輪を持って。
「・・・美神って絶叫アトラクション乗れるのか?」
冷静なって考えて輝は言った。
美神は性格や言動の割に怖がりだ。
そのことを輝はなんとなくだが知っていたので聞いた。
「だ、大丈夫よ!」
美神は自信満々に言ったつもりなのだろうが声は震え若干足も震えている。
「足震えてるぞ・・・まぁ捕まっとけ・・・俺に」
「うぅ!?」
輝は気づいていない。
無意識のうちに美神の心を撃ち抜いていたことに。
「お、少し前に進んだな・・・にしても暑い」
「そうね・・・うん」
急な輝の言葉に美神は少し驚いた様子で答えた。
もう美神の心臓は機関銃のごとくどくどくと鳴らしている。
顔も赤くなるのが自分でもわかってきた。
(うぅ・・・今日の輝・・・なにか変なのよ・・・ずるい)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遂に輝達はウォータースライダーに乗ることが出来た。
「結構早かったなぁ・・・さぁ美神乗るか」
「え、えぇ・・・わかったわ」
輝はかなり早く到着したと思い美神に手を伸ばしエスコートした。
しかし美神はこの待ち時間は自身の心との戦いのせいかかなり長く感じてしまった。
今輝が何してもときめいてしまう彼女からしたら最悪な状態にいる。
(もうなんなのよ!・・・手を伸ばすなんてされたら・・・私)
「美神どうしたんだ?行くよ」
「わかっているわよ!」
ぼーっとしていたのか美神は輝の言葉にハッとし他様子を見せた。
もうこれ以上油断しないと心に決意を示し輝の手を取り1歩1歩前へ進む。
輝は係員から美神が一喜一憂しながら心と対話していた間に浮き輪を借りていたらしく浮き輪の上に座っている。
それもかなり大きいので美神の浮き輪は要らなさそうだ。
「結構大きめの借りちゃったしなぁ・・・どうするかその浮き輪・・・」
「じゃあ先輝が乗って行くのは?」
「いや、というかよく良く考えれば俺と美神が一緒に乗ると隙間出るからその間に挟み込めれるはず」
輝の借りた浮き輪は2人用のだ。
だが美神は体型が胸を除き小さいため少し隙間ができる。
その隙間に浮き輪を入れれば落ちる心配もなく輝からしてみれば胸に当たることを回避出来る一石二鳥のような考えだ。
「わかったわ・・・じゃあ遠慮なく」
そう言うと美神は浮き輪を前に持ち輝の後ろに座った。
輝の予測通りか浮き輪は落ちていなさそうだ。
むしろ安定感すらあるぐらいだ。
「ではどうぞ!」
係員がそう言うと輝は浮き輪を滑らせた。
ここのプールはウォータースライダーが名物と言われている分かなり力が入っている。
ぐるぐるとカーブやメガホン型のような道。
とてもスピードが早くなりまくりスリリングな旅ができる。
輝は手を上げ楽しそうな声で
「ヒャッホーイ!」
このウォータースライダーを完全に楽しんでいる様子だ。
美神はずっと輝の背中にうずくまるような形で震えている。
「うぅ!きゃー!」
輝の予測通り完全にビビってしまっている。
だがそんな怯えている美神にまだまだ容赦なくスリリングなカーブなどは続く。
カーブやスピードが上がる度美神は「ひ!」や「キャッ!」など小さく怖がっていた。
そんな小さな言葉が聞こえていたのか輝がある行動を起こす。
「え、キャッ!」
「こうなら安心できるだろう」
輝は手を器用に後ろに回し美神の頭を自身の背中にくっつけさせ周りの景色を見せず落ちるといった恐怖心を和らげさせるための行動をとった。
この技は少し大きめの浮き輪だからできた荒業だ。
「あ、ありがとう」
美神は驚きのあまり声が小さくなってしまった。
すごいことに輝の行動が美神の小さな悲鳴となる恐怖心をほとんど消し去った。
美神を落ち着かせるため腕を使いつつも輝はこのウォータースライダーを楽しみまくっていた。
遂にウォータースライダーも終わりに向かう坂へ進んでいた。
坂なのでとてつもなくスピードが上がる。
このスピード感には輝も恐怖心を抱かなくてはいけない。
「うぉー!早い!」
だが美神ほど恐怖心はないためこの状況下も楽しみながら滑っていた。
この時の美神は輝の背中に安心感を覚え恐怖が無くなっていた。
遂に下のプールが見え始め瞬きした瞬間衝撃が走った。
水の地面に触れたのだろう。
バシャーンと大きな音を立てこのスピードがゼロになってきた。
輝にとっては短く美神にとっては何よりも長いウォータースライダーが遂に終焉。
スピードがゼロに迎え輝は美神を隠していた腕を元に戻し体を伸ばす。
体を伸ばし切り終えると美神を見つめた。
美神は最初こそ震えていたものの少しだけ時間を置くと徐々に震えはなくなっていった。
浮き輪を抱きしめるように持ち輝を上目遣いで見つめた。
「ありがとう・・・安心したわ」
「そりゃどうもどうも・・・無理させてごめんな」
輝は謝った。
美神には少し苦痛な経験をさせてしまった罪悪感からだ。
だが美神の返答は輝の思う180度違う答えだ。
「楽しかったわ・・・また行きたい」
「そ、そうか・・・ならまた来年とか・・・かな」
美神はあれだけ怖がっていたものの楽しんでいたのだ。
また乗るとなると少し不安はあるが美神が不機嫌になっていなくて安心した。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・`)




