初体験時々ポンコツ
輝と美神は家の近くのコンビニに着いた。
距離は割と短いのでそこまでしんどくは無い。
だが外は暑いためもう既に輝と美神は汗をかいているためこのコンビニのクーラーは最高だ。
「とりあえず買うもの買って帰るか、欲しいのあれば奢るからな」
「だから私は借りを作らないわ……」
「別にお前の借り目的でやってないから安心しろ」
「私が嫌なのよ!」
美神は相変わらずだが輝にはツンツンしている。
しかし時々小声でとてつもないデレを出すので油断ならない人物だ。
「まぁ買い物ないならどこかで待っててくれ……さっさと終わらすから」
「わかったわ、外で待っているわね」
「おう、気をつけろよ」
そう美神に言うと美神はコンビニから出ていった。
美神はああ言ったものの輝は不安で仕方ない。
美神の顔は日本ではトップレベルの可愛さであるためもちろんナンパ等がよく起きる。
美神のためにも輝は早く買い物をすまそうとした。
「とりあえずスナック菓子とジュースで良いか……アイツらのことだし特にこだわりないだろ」
お菓子のある棚から輝のチョイスで選ばれたお菓子たちがカゴの中に入れられている。
次にジュースのコーナーもお菓子と同じく輝の独断と偏見のチョイスで選ばれていった。
そうしてカゴの中はまぁまぁ多くなりレジに持って行った。
この間わずか2分弱。
輝自身びっくりだ。
「1200円です」
「はい、あとチキンを2つお願いします……」
「かしこまりました、お値段変わりまして1700円です」
「これでお願いします」
「1700円きっちりお預かりしました、ありがとうございます」
できる限り早めにレジでの会話を済ましコンビニから出ることが出来た。
片手に大きな袋を抱えて輝は美神の元へ行った。
しかし案の定と言えば案の定だ。
美神が変な男に絡まれている。
「ねぇ一緒に遊ばない?海とかさ」
「だから大丈夫です」
「なぁほらほら……」
「辞めて!」
ナンパ男が美神の体に抱きつきあらぬことをしようとしている。
輝は少しの隙に入り込もうとしていたがこうなってしまえば作戦を変える他ない。
「美神ー!大丈夫か!」
「輝!」
輝が叫んだ時、美神はすぐさま振り向いた。
その時の顔は安堵と喜びで満ち溢れていた。
「おま!お前は誰だ」
「こいつのツレの者だ……スマンが帰ってくれ」
「チッ!ツレいるのかよ……カッ!」
ナンパ男は腑に落ちないような気分を持った顔でコンビニから去っていった。
美神になにかされてないか見たがどこもされている様子はなくひとまず安心だ。
「美神……大丈夫だったか?」
「えぇ、大丈夫よ」
「ごめんな……もう少し早ければ」
「いや大丈夫よ!」
美神は申し訳なさそうな顔で言っている。
本当の気持ちを言う時の顔だ。
「……ありがとう……かっこよかったわ」
「そりゃどうも……」
「…………王子様みたい」
「っ!?」
声が漏れそうになったがなんとかの思いで輝は耐え抜いた。
さっきから美神の無意識なのか意識してなのか分からない攻撃が多くて輝の体力はみるみる消えていく。
「とりあえず帰るか!」
「そうね……」
輝と美神はもう特にコンビニに用事などは無いためコンビニの敷地から出て行った。
輝はさっきのナンパ男を振り払う時の緊張のせいか体が妙に暑い。
なにか違うことに意識しないと気が済まない気分だ。
「美神……これ食うか?」
輝の会話ネタ詰まった時の切り札はさっき買ったフライドチキンだ。
さっきのコンビニのド定番商品なためハズレなわけが無い。
「悪いわよ、私は良いわ……」
「いや、俺が食うから買ってきたんだ……隣で食べてたら嫌だろ?だからだ、まぁ悪く言えばついでかな?」
「……わかったわ……なら頂くわ」
そう言うと輝の片手にある新品のフライドチキンを渡し美神は初めてのものを見る時の不安が少しある顔で思いっきりのフライドチキンに頬張った。
最初は不安気な顔だが見る見るうちに柔らかく溶けていくような顔になってきた。
「……美味しいわ……こんなのがコンビニに売ってるの?」
「そうさ……学校の近くにもあるし買いたい放題だぞ」
「……ほわわわ」
「っぐ!?」
輝は美神に恐怖すら抱いている。
美神は輝の前ではとことん素の自分を見せつけている。
その姿はとても魅力的で輝の目や耳を奪っていくようだ。
「美味い〜」
「そうか……それなら良かった」
美神のトロトロに溶けきった声で輝は平常心がどうかなりそうだったが気合いで耐え抜いた。
(周回魂ー!見せつけてやるよー!)
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フライドチキンを食べ終わり美神はとても満足な顔をしている。
その顔を見た時輝は
(とりあえず上機嫌になれて良かった……)
少し安心した。
だがやっと美神もいつものように戻るにつれなにか思い出したようだ。
その様子が顔から全てとれた。
「ね、ねぇ……私さっき恥ずかしいことしてなかったっけ……」
「大丈夫だ、普通だったぞ」
嘘である。
本当はさっきからフライドチキンに心奪われすぎて素のポンコツ美神が輝にモロバレてしていたのだ。
「そ、そう……ならなんでニヤニヤしているの」
これが甘い詰だった。
美神は気づいてしまった、輝の顔から。
「……っー!?このバカバカバカ!」
「痛い殴らないでくれ・・・俺は何も見てない」
美神のポコポコ音がなりそうな弱々しいパンチが輝の脇腹に当たる。
輝はまた甘えてるのかと思ったが本人は大まじめだったようだ。
「ならその顔は何!?完全に私のことをヤバいやつって思っちゃったじゃない……お嫁に行けない」
「大丈夫だ、俺はたくさんそして美味しく食べてくれる女性は好きだぞ」
そう言うと美神の顔はプシューと音が聞こえるようなスピードで顔が赤くなってきた。
それと同時にさっきより美神のポコポコパンチの威力が若干上がった。
「このバカバカバカバカ!」
「痛い痛い痛い……美神の油断だろ……理由は……痛い痛い」
その後美神の機嫌が悪くなったのは言うまでもない事実だ。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・`)




