準備時々好奇心
「輝、ついに」
「輝よ、ついにこの時が来たな!」
浩史と要が輝の席の前で何か輝に言わそうとしている。
2人の言いたいことは輝には手に取るようにわかっていることである。
今日は終業式の日。
学生なら誰もが待ち望み、誰もが青春の1ページになるあの期間。
「わかったわかった、近いからどいて、夏休みだろ」
そう輝が言うと要と浩史は目を輝かせ喜んだ。
2人は圧倒的に青春エンジョイ勢のため夏休みは命の次に大事である。
「だからさ!輝、お泊まりするぞ!沙也希と要と!」
「おいおい待て待て何勝手に決めてるんだ、というか俺の家はカフェだからな勝手なことされると…」
「ふふふそのことを任せなさい」
要がニヤついているということは何か隠しているということだ。
要の行動力は自分の楽しいことになるにつれ大きくなるのが特徴的である。
「カフェのおばさんとはもう許可を得てるのよ!」
「くっそ!そんなことだと思ってた!」
輝は悔しさのあまり頭を掻きむしりながら叫んだ。
その様子を浩史と要はやってやったぜと言わんばかりに見つめている。
「そして渚ちゃんとも連絡を取り一緒の部屋で寝るの〜輝達は男3人蒸し暑い空間で生きる事ね」
「ちくしょう俺の家なのに・・・まぁ、しゃあないか・・・どうせ1泊2日だろ?」
「そりゃね、私も暇じゃないんで」
お前は年中暇だろと叫びたくなったがこれ以上話を変えたら疲れるだけなので普通に諦めた。
要は突如輝の隣の席である美神の方に体を寄せる。
「美神!美神!良かったら輝の家でお泊まりしよー!」
「私は大丈夫です・・・」
美神は予測通りの反応だが要はタダでは落ちない。
仮に要の押しが弱くても今の美神の顔を見たら引きはしないと思う。
美神はさっきからこのお泊まりの会話をずっと盗み聞きをしていたのだ。
それも分かりやすく。
このしつこさは幼なじみの輝だからこそ言えることである。
「美神、夏休みはあと2年は経験する、でも!この1年生という夏休みは今年で終わりなのよ!」
「は、はぁ〜」
熱く語り掛けることはするもののみるみる美神の顔は引いている。
だが要は一度エンジンがかかると止まらない。
そのためこの謎の主張はまだまだ続くようだ。
2分後
「・・・ということなの、美神、行きましょう!」
何かひと仕事したような顔で要は美神に手を伸ばした。
「・・・そこまで言うのなら・・・わかった」
「・・・やったー!輝!美神を落とすことが出来たわ!」
「お前のその執念はいつ見ても真似出来ないわ」
要の熱が高すぎた故に美神は折れてしまった。
少しその姿を見て美神に同情してしまったのは輝だけの秘密だ。
(というか俺の家で美神がお泊まり決定と決まった瞬間から周りの視線が痛いのだが)
要自身声がでかいことに気づいてはいないが実際はかなり要は声がでかい。
コソコソ話ならこのお泊まりの件はバレなかったが要の声の大きさが故にバレてしまい今の死の視線を作っているのだろう。
「要ー、声でかい」
「また!?やってしまった」
反応的にも真面目にミスをしてしまった反応なため叱りにくい。
だが要はごめんと輝に言い美神の席の隣に行き色々と説明を始めた。
会話を盗み聞きすると輝の家の情報などを教え始めた。
だが要は美神が全て知っていることは知りはしない。
だが要の性格は美神もあらかた知り始めた頃合なためあえて言わないのだ。
言ってしまうと要はまた暴走し始めるためだ。
「なぁ輝、俺達も泊まりの用意考えようぜ、やっぱりオールか?オールだよな」
「浩史よ、今までオールと言ってきた人間は全員寝たんだぜ」
「俺は有言実行する主義なのでね」
「本当かなぁ?」
そう首を傾げるともう1人の参加者がこちらにやってきた。
先程までトイレに行っていたもう1人の参加者沙也希だ。
「お泊まりの用意?俺も決めたいね」
「やっぱりゲームでしょ、深夜に3人でゲーム、背徳感が〜」
浩史はゲームから離れなれないようだ。
実際輝も沙也希もゲームを深夜にやろうとしていたので特に否定などはせず話が進む。
「でもやっぱり背徳感と言えば深夜にご飯だろ?ポテチとかコーラとか買いだめするか?」
輝はもう1段階上の背徳感の味わい方を知っていたようだ。
実際深夜にお菓子とジュース、ゲームは最強である。
「うわ、輝、さすがだな」
「沙也希、若干引かないでショック受けちゃう」
「輝ー!やっぱりお前とは意見が合うなぁ」
浩史は輝に後ろから抱きつきそう言った。
「まぁネタなんてその日の気分だよ」
「まぁ沙也希の言うことは正しいな」
「じゃ、当日までに俺もネタ探してくるわ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美神の席の隣の壁に持たれ付きながら要は美神と話している。
「やっぱりお泊まりの代名詞と言えば!なんだと思う?」
「そう聞かれても、私はこの手のことは初めてだから・・・やっぱり分からない」
要も美神のうぶな反応を見て本当だときづいたようだ。
「答えは恋バナ!でした」
さすがの要も鬼では無いため即答えを教えた。
しかし恋バナと聞いた途端美神の顔は面白いくらい赤くなってきた。
「こここここ、恋バナ?」
「あらあらどうしてそこまで焦るの?」
要のいやらしい対応で美神は汗が止まらない。
前から要は思ってはいたが美神は基本何でも出来る、しかし色恋沙汰はとても弱いと要は思って見ている。
だがそこも良き!
「渚ちゃんの恋バナ、私の恋バナ、そして!美神の恋バナ」
「わ。私は無いわ!」
誰が見ても嘘だと思うくらい美神の反応は焦っている。
それが逆に要の好奇心を揺さぶった。
「美神、大丈夫、女子会の内容は絶対漏れない、信じて!」
「•••わかった、なら信じるよ・・・」
美神の恥ずかしそうな顔で消えかけの声を出すと隣にいた要はそれに対義するかのように微笑んできた。
「やったー!」
要は大袈裟と言われても過言では無いくらい喜んでいる。
他人の色恋沙汰大好き人間の要はとにかく恋バナが好きだ。
「あ、そうだやっぱり女子会と言えばお菓子」
「そうなの?」
「ふふふ、そして、服もよ」
美神の目はずっと疑問だらけの目だ、しかしその中に喜びもある。
美神は今まで孤独な人生を送ってきた。
そのため友達などゼロなのでもちろん女子会などはした事の無いことだ。
だから今要の言っていることは全て新しいことなので不安もあるがそれを超える喜びがある。
「そうだ、ごめんスマホ貸して?」
「まぁいいけど」
そう言うと美神のスマホを慣れた手つきで要は触っている。
1分くらいで何か終わったらしくスマホが返ってきた。
「ありがとうね、美神」
「まぁこの程度なら・・・あれ、何か連絡が」
美神がそうつぶやくと何かメッセージアプリに通知がある。
好奇心で美神はアプリを開けてみるとそこにあるのは「馴染要」という名前が載ってある。
要のチャットから通知が来ていたようだ。
開けてみるとスタンプが送られている。
「え、これは」
「ふふふ、これで私たち本当の友達だね、ここから連絡しても良い?」
「え、えぇ」
要の顔を見るとやりきった顔で見つめている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お泊まり編
プロローグ
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・`)




