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断絶

「橘さん、少しこちらに来てください」


「は、はぁ」


(ソラ!周りを考えてくれ!)


ソラの転校初日、もちろん輝のクラスでも話題の中心であり他のクラスはもちろん他の学年でさえ話題となり輝のいる1年Y組に来ているというがそのような視線お構い無しに輝を呼んだ。


周りの視線は明らかに殺意を込めているのは言うまでもない。


しかしこのままソラの元へ行かなくちゃ次の面倒事はソラからも起きる。


そのため行った方が多少マシになるため大人しくソラの元へ向かおうとした。


「ちょっと・・・輝」


輝は後ろを見ると輝のダルダルのブレザーの袖を軽く美神が握っていた。


(あ、これ終わったヤツ)


美神の衝撃の行動でなお輝を見る視線は殺意が強まった。


「な、なんだよ」


「あの人を本気で信用している気?」


「安心しろ、あいつはお前の護衛する人だ、だからこれで俺とは御役御免ってことになるはずさ、じゃあな」


そう駆け足になったが輝は言い残すとソラの元へ輝は歩き出した。


(御役御免って、輝は・・・私の友達じゃ)


彼の口からこぼれたのは実質的な絶交宣言。


彼はまさか美神との交友を快く思っていなかったのかという激しい絶望が美神の華奢な体を包んだ。


初めての友達初めての経験。


全てを彼から貰ったものがあの一言で一瞬で灰となり崩れ去った。


彼女にとってその宣言とういのは暴言を吐かれるよりも辛くそしてまたあの戻りたくない過去に戻ってしまう。


結局は美神の重い自身のエゴを彼に知らず知らずのうちに括り付けていた。


だがどれだけ心の思考を変えてもただ1つだけ揺るがないものがある。


彼との友情を失いたくない。


この一つだけは揺るがないし揺るぎもしない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ソラは人が少ない屋上まで輝を連れてきた。


昼休みなのでは無いため人はゼロだ。


屋上に着くとソラから話し出した。


「輝様、美神様と結局あなたはどうしたいのです?」


「俺は・・・まだ決まってないと言えばどうする?」


「なら先私のしたいことを言いますね」


ソラは顔色何一つも変えずに話している。


少し不気味さを感じる。


「私的には輝様の性格上これ以上面倒事に巻き込まれたくないので護衛等は全て私ひとりで行います」


「・・・俺はそれで良いが」


「・・・なら輝様の意見を」


「俺の意見はさっきのだ、まぁあれだ、お前もこれからは頑張れよ、でも・・・やっぱなんでもいいわ!」


そう言い残し輝は屋上を去った。


ソラは輝の足速と帰る仕草についていけずただぼーっと見るしかできていない。


(これで良いんだ、俺は)


そう思い屋上からどんどん距離を離した。


だが何かが心に引っかかって気持ちが悪い。


(なんだよ、俺、これで良かったんだろ)


輝の望みは静かな日々。


美神との関係を断ち切った今、輝は静かに暮らせる。


しかし輝はこのモヤモヤの意味がいまいち分からない。


(これで良かったんだろ、ならなんだよこのモヤモヤは!)


心に激しく問いかけるが理由が分からない。


「ははは!俺はこれでよかったんだよ!ははは!」


意味もなくひとりで笑ったが心は晴れない。


むしろ心は深く深淵に潜り込みそうな気持ちだ。


ひと笑いしたが次は涙がこぼれ落ちてきた。


もう自分の気持ちが分からない。


分からればどれほど良いのか。


(なぁなんなんだよ!結局俺はどうしたいんだよ!)


心に叫びかけるが返答は何一つない。


壁を軽く叩くが気持ちが晴れない。


「クッソ!気持ちに整理がつかない!俺は、俺は・・・俺はなんて情けない人間なんだよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


授業中、いつもなら寝るはずの輝が寝ていない。


寝ない日はだいたい朝から顔艶がいいが今日は顔艶も寝る日の時と同じだ。


だがずっと深刻そうな顔でただ授業を受けている。


時刻は昼。


授業中などの様子が気になったのか沙也希と浩史は食堂で話しかけてきてくれた。


「お前何かあったのか?」


「輝、なんでも抱え込むな。俺たちは友達だ、辛いことも全てシェアし合える関係だろ?教えてくれ」


沙也希は輝に変わるきっかけを作った人。


そのためとても人の異変に気づくのが早い。


輝はバレていたのかという気持ちの方が強い。


輝的には言いたくない気持ちの方が大きい。


だがいつもはふざけている浩史の目すら真面目だ。


今は2人を信用して話すのが良いと判断し話し出した。


「2人とも聞いてくれ・・・俺、美神とこれ以上関係を持たない」


「・・・どうしてだ輝」


浩史は絶句の顔だ。


なんやかんやありながら沙也希と同じくらい美神との事を応援していたためそのような顔になっている。


沙也希はまず冷静に理由等を聞くことにシフトチェンジさせた。


「理由か、俺の役目が終わった・・・からかな」


「輝の役目?」


いまいちピンとしていない。


沙也希だって輝と美神の全てのことを知っているほど万能では無い。


そのため知らない知識はたくさんある。


「俺は美神のことを多分知らず知らずのうちに守るために関係を深めてたんだよ」


「・・・」


沙也希はついに黙った。


顔を見るとかなり何か言いたげな顔をしている。


当たり前だろう。


少し気まずい沈黙が終わると浩史が話し出した。


「・・・認めない!」


「「!?」」


「少なくともこんな終わり方俺は認めれない!結局お前は逃げた!」


「・・・あぁ、俺は逃げた」


浩史の言うことは間違えではない。


輝は逃げてしまった。


この事実は揺るぎもない事実だ。


「・・・少なくとも俺はこの結末は嫌だな・・・見損なったぞ」


そう言い残すと残っていた全ての料理を食べ終え席を去った。


「・・・少なくとも俺も意見は浩史と同じだ、そのことを忘れないでくれ、でも最大限手伝いはする、でも最終決定は俺では無い、輝だ、そのことを必ず忘れないでくれ」


「・・・すまない」


沙也希もそう言い残すとそそくさと食べ終わり食堂を出た。


沙也希も口ではああ言ったがきっとこの結果には心底呆れている。


長年とまでは行かないがかなりの時間を共有したからこそわかる事だ。


沙也希が去ると一人ぽつんと本来4人で食べる所で目の前にある生姜焼き定食に貪り始めた。


(·····味がしないな)


いつもは浩史、沙也希、時々要や美神といった必ず誰かしらと食べていたのだが今日は誰もいない。


寂しさというスパイスがかかっておりそのスパイスはとてもまずい。


(この結果を作ったのも全て俺だし甘んじて受け入れるしかできない)


········································


放課後浩史は珍しく早く下校。


沙也希はクラブのため不在。


この状況下だが輝にはやるべきことがある。


もう1人の助っ人である要だ。


彼女からも助言を受け美神との関係修復のために役立たせることは今必須なことだ。


たまたま運良く要は一人きり。


この瞬間を逃す他ない。


そう思うと輝は要に話しかけた。


「なぁ要·····」


「知ってるよ」


輝の発言を遮るように要は話した。


なんとなくだがこの静かな教室に一人でいる理由がわかった気がした。


(沙也希か)


沙也希はとても面倒見が良い。


そのため色々な苦難などがあったがそれでもなお面倒見の良さは変わらず今も生きている。


きっと要がいる理由も沙也希の手回しがあったからできたのだ。


(2人ともすまない)


そう思いながら要の顔をじっと真剣な眼差しで見つめていると要が話し出した。


「輝は美神に失礼なことをしたって思わない?」


「そりゃ·····思う」


「·····まぁ罪の意識がある分マシ」


「·····」


「まず輝がやるべきことはただ1つ!」


要はいざという時とても頼りになる。


今までも何度も要にお世話になったことのある輝だから思えることだ。


「まず!謝れ!」


「·····そうだよな」


「それが無理なのなら自分の思いの丈をぶちまける!」


「·····あぁ」


「それも無理なのなら!何度でも折れずにやり続ける」


要の言うことはとても当たり前のことだが今の輝に出来ないことが多い。


でもこうなった以上甘えたことは言えない。


全ての助言を受け輝は前へまた進む。


「ありがとう、要。俺本当に沙也希と要と友達になれて、本当に良かったよ」


「何言ってんだか、私は·····君の嫁だぜ」


「前言撤回」


「sorrysorry!」


こうやって笑い合える関係、こうやって馬鹿言い合える関係。


輝はこのような関係を誰とでもしたいと思っていた。


しかし過去の記憶が全て邪魔したせいで今まで幾度となく苦労した。


だがもう弱い自分とは決別する日が近いようだ。


(今·····俺がやるべきことは!)


ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)

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