炭酸時々慣れ
(さっきの美神のあれはなんだ!好意がある人の行動だろ!)
輝はさっきの美神の行動で頭がいっぱいだ。
もし好意があるのならそれはそれで良い、しかし無いのならとんでもない思わせぶりな行動なのでとても注意がこれから必要になる。
美神の手が胸に当たったせいかさっきから痛みがない。
多分理由は緊張のせいなのだがもう女神の力が出たとしか思えないくらい脳みそが働けていない。
その弊害かずっとぼーっとしながら歩いていた。
しかしある時誰かに声をかけられた。
その声が後々波乱を呼ぶとはまだこの時は分かるはずもない。
「あなたが橘輝様でしたっけ」
「うん?·····あっはい」
輝が振り返ると黄金色の髪が夜中とはいえども光るような感じがする。
顔や何もかもが全て整っており美神顔負けの姿だ。
彼女の姿から見ても歳もほとんど一緒だろう。
少し顔から威圧があるが今の状態の輝では全く効かない。
半深夜テンションに同等のテンションを持っているせいかこの状況すら未だに飲み込めていない。
しかし全てにおいてぼーっとしていた輝はなぜ彼女からなぜ自分の名前を知っているのかを聞くのを忘れていた。
「俺になんか用でも?」
「·····確か美神様とよくはなしているひとですよね」
「んまぁそんな感じだが···何かまずいことでも」
輝的には別に美神と話すことがまずいというわけが無い。
むしろ話していて楽しいぐらいだ。
だが金髪の女性はさらに話し出した。
「遅れました、私は美神の監視役でいます伊坂ソラ(いさかソラ)と言います」
「監視役?はぁ·····またそんなものを」
「まぁ私自身の仕事ですし親の仕事でもあります」
「んまぁ大変なことを、というかなんで美神の監視を?」
「彼女はいつかhikawacompanyの取締役になる人です、彼女の将来のために私は不摂生していないか、羽目を外していないかを常日頃監視しております」
話を聞いた時何が何だか分からない感情に陥った。
この時始めて美神がhikawacompanyと繋がりがあることを知った。
その時今まで異常な程の努力をしていたのかこの時初めて理解出来た。
謎が全て解けた、しかしまだこのことにより謎は深まる。
「だいたいわかった、でも一つだけ聞かしてくれ」
「私で答えれるものなら全て」
「それならなぜ俺と接触した?」
このことは純粋な疑問だ。
輝と美神は普通な交友関係の上で話している。
その関係に不純なものや不摂生をすることなどあるはずがない。
「あなたが美神様にふさわしいかどうかを決めるためです」
「·····はぁ·····確かに俺は不良みたいな人間だ、特に生活習慣とか授業態度は·····」
「·····ならその関係を····」
ここで関係をやめろと言うのはわかっていた。
ソラがここに来たのは紛れもない美神の監視のためだから不良と関わるとロクでないことに巻き込まれるのは目に見えている。
しかし輝には切り札がある。
これを言うのはとても恥ずかしい、しかし身の潔白と自分の安全さを教えるにはこれしかないのだから。
「俺があいつとよく関わってるのはな交友もあるがあいつの身を守るためにも一緒に居るんだよ、監視役が学校まで見れていないのはだいぶ監視体制としてはポンコツだと思うけどな」
「·····具体的には」
ソラの顔が真面目な眼差しになった。
その目には少し興味すらある。
「美神は容姿も良ければ勉強もできる。運動もできる男となればそんな人を素通りできないだろ?そのせいであいつはよく面倒事に巻き込まれてるんだ、でもあいつは男とあまり関わりを持ちたくないと言ってる。それ災いとなり面倒事が多いんだ」
「·····ならなぜあなたはこのような関係を」
「·····信頼だよ」
美神は輝を信じている。
この信頼があってこそ今の関係は成り立っている。
この関係に信頼がなければとっくに2人はクラスメイト程度に仲は落ちるのは確定だ。
「まぁあいつの面倒事を増やさないためにも美神と接触しているって訳だ、こんな一般人でも分かるくらいあいつは危険だ、これで身の潔白を証明できたか?」
「·····分かりました·····これからの策を相談していきます、本日はありがとうございました」
そう言い残すとソラは輝の元から去った。
確実に輝の望んでいた静かな高校生活が遠ざかりつつあるが結局は自分の手で切り開いてしまった道。
そのため文句などは言えない。
だが確実に分かるのはこのことが後々面倒事になっていくことは理解出来た。
(果たして俺、どうなるのかね)
自分で開いてしまった未来。
···································
学校に着くともう美神は座っていた。
昨日のことがあったせいか美神は微妙に不機嫌そうだ。
しかし輝は昨日の美神のことに加えソラとの接触もあったので美神の件の恥ずかしさなど消えていってしまった。
「おはよう·····ご機嫌ななめだな」
「·····おはよう····昨日は·····その」
明らかに顔がキレている時の顔だ。
しかし声は恥ずかしさを含んでいるのでその顔も全て恥ずかしさから来ているのだと理解ができた。
「ま、まぁこれ飲んで機嫌直してくれ」
そう言い出したのは期間限定で売ってあったがあまり好みの味ではなかったサイダーだ。
味が美味そうだからと二本買ったが二本とも飲み切れる自信がなかったため渡した。
クズみたいな考え方だが在庫も処分でき美神の機嫌も取れるといった最高の考えだと輝は考えついたのだ。
美神の顔を見るとまだ微妙に不機嫌っぽそうだがさっきに比べると顔はマシだ。
「わかったわ、大人しく今回は受け取る」
「ありがとな」
輝的には少しでも機嫌が直ったことに安堵ができた。
美神はさっき輝から渡されたサイダーをごくごくと飲んでいる。
美神の飲む姿でさえ絵になっているなのがすごいと輝は内心驚いている。
だが美神はこの日初めて炭酸といったものに触れたらしくとても驚いた顔をしていた。
少し時間が経つと輝をじっと睨んだ。
顔を見るとはめられたとか裏切られた時の顔と言いたげな表情だ。
「炭酸初めてか?」
「私をはめたの?」
「はめてないはめてない、炭酸ってこういう飲みものなんだ、喉がこうなる感覚が味わえるから美味いんだ」
「そう·····私は慣れないわね」
美神の顔的にも輝が仕込んだものかと勘違いしていたがそれが炭酸だと言われると顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
自分の自爆にとても恥ずかしがっているようだ。
(こういうところはポンコツだよなぁ)
よく良く考えれば美神と過ごして間もないが未だに美神がジュースを飲んでいる場面は見たことない。
そこから美神の育ちの良さがわかってきた気がした。
「まぁ慣れたら美味いよ、俺も最初は慣れなかったけどな」
「そ。そうよね」
美神の謎のドヤ顔に少し困惑しそうだが美神は負けず嫌いという性格を完全に忘れていた。
多分この時でも輝に飲めて美神が飲めなかったことに悔しさを覚えていたのだろう。
(まぁ機嫌取り直し分良いか)
「一つ気になったけどさ、それ美味いか?」
「まぁ美味しいわ」
「·····あっそう」
「何その反応」
美神は多分新しいことなのでなんでも美味しく感じたのだろう。
だがしかし輝がなぜいきなり炭酸、それも期間限定味を渡したのかを聞くと多分今日1日どころか1週間は口を聞いて貰えない。
そのためバレたら非常にまずい。
だが美神自身そこまで深追いはしなかった。
「輝·····今日はありがとう、また美味しい炭酸?があれば教えてね」
そう多少恥ずかしなりながら言う姿はもはや見てしまったら誰しも虜になってしまいそうだ。
(自制心、自制心!)
そう押さえ込み何とか朝の時間を耐え抜いたのは言うまでもない。
しかし今日1日この表情が永遠に付きまとったのは輝だけの秘密だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝のHRが始まった。
どこか担任である増田はソワソワしている感じだ。
その反応からクラスの人は何かがあるのは予報づいていた。
「今日!転校生が来た・・・入りな」
そう言い入るとクラスにいる全男子生徒の目を釘付けにしのは言うまでもない。
しかし輝は別の理由で釘付けになってしまった。
輝くような金髪。
美神顔負けのスタイルや顔。
「皆さんこれからよろしくお願いします、伊坂ソラです」
その時教室から歓声が上がったのは言うまでもない。
男子の様子を見ると本当に嬉しそうで見ていてすこし気持ち悪いなと思うくらいに盛り上がっている。
しかし輝からしてみればソラが来るということは今までの美神とのことに加えソラとの事も増える。
面倒事になるのは100パーセントだ。
そう思い美神を見ると狐につままれたような顔をして見ている。
「え、なんで、なんで彼女がいるの」
少しその顔で笑いそうになったがもしバレてリなんてしたら美神にHR後何されるのかわかったものでは無いので黙っておいた。
「まさか知り合いなのか?と言われても昨日色々とソラから聞いたから知ってるけどな」
「・・・それなら言わなくてもいいじゃない」
「変な勘違いを防ぐためだ」
「なんか腹立つけど今日はそれで許すわ、サイダーのお礼も兼ねて」
「それならありがたい」
輝は思った。
(これ確実にソラと何かと関わるやつだな)
果たして輝の学校ライフはどうなるのか!?
ブックマーク、ポイント欲しいな|ω・`)




