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君と俺が出会った日

「ねぇいいだろ連絡先教えろよ」


「だから何度も言いますが私はあなたたちに何一つ興味はありません」


「少しくらいいいだろ減るもんじゃないんだし」


「だから、あなたたちには耳がないのですか?」


輝が体育館に着くとまだ人が居るがその中に確実で美神らしき姿が見える。


しかし男数人に囲まれて連絡先を聞かれているのが耳に入った。


しかも美神はとても嫌がっている様子なのがわかる。


「じゃあさっきの男はなんなんだよ」


「あの人は無害だったので席だけ借りただけです」


「そうか?あいつととても楽しそうに話してたのを見ているのだが」


美神の言い分が絶望的に弱い。


(美神、その言い訳は効きにくい)


しかし男子生徒の行動はどんどんエスカレートしている。


「なぁ良いじゃん」


「だから私は・・・ひゃっ!どこ触ってるの!」


「こうなったら実力行使しかないな」


「本当にあんた達は脳が」


「脳がないなりにこうやってるんだよ」


「いや、本当に、ヤダ」


美神の声が恐怖のせいかどんどん小さくなってきている。


いつもは強気な美神でもこういう場面は弱くなる。


人間誰しもそういうのが普通だろう。


美神は逃げようとしたが逃げれないように囲まれている。


男子生徒が美神の周りを囲うような形で待機している。


そのせいでどれだけ逃げようとしても美神は逃げれないのだ。


(俺は波風立たない順風な高校生活を送る、ここで逃げれば順風な生活だ)


そう思い足を1度後ろに引けようとした。


しかし自分の思う通りに足は後ろに行かない。


どれだけ頑張っても足が後ろに行こうとはしない。


ゲームの強制イベントのように自分の後ろに見えないバリアを張られているのかと思うくらい後ろに体を動かすことすら出来ない。


(俺は・・・これで良いのか)


迷ってる間にも美神の声はどんどん小さくなり苦しんでいる。


「だから嫌なのよ!」


「なら早く教えろよ!」


「同じことを・・・何度も言わせないで」


さっきまでの威勢の良い態度はもう何処吹く風となり消えた。


さっきまでの威勢の良いのと同じく美神の体も心なしか小さく見えてくる。


美神もどれだけやられようとも威勢が良い感じに話すがすぐに男子生徒の圧により声が小さくなってしまう。


色々なことが重なった美神の顔を見ると今にも泣きそうな顔だ。


(美神!?)


その顔が鈍りかけていた輝の決意を後押ししたのか自然と足が前に動いた。


(俺は・・・やっぱり性格を急に変えることなんて無理なんだな)


ここで後に引けば平穏な日々が送れる。


だが自らまた中学時代の時のように同じ過ちを繰り返そうとしていたのだ。


輝は自分を愚かだと言いたい、だが一つだけ変えれぬ信念があるせいかその言葉が全く響かない。


自責の言葉を沢山並べるがそれでも美神に向かう足は止まることを知らない。


遂に男子生徒の元につき静かに肩を触った。


「すみません、ちょっとそこの美神に用があって」


その時の男子生徒の顔は疑問符を大量に出していた。


しかし直ぐに冷静さを取り戻したのか


「すみませんちょっとこちらも用がありまして」


「いやぁこちらの方が用的には重いのですよ、何せ先生が呼んでるみたいだし」


「なら少し言っておいてください今はキツイって」


中々諦めが悪い男子生徒に輝は手を焼いていた。


すると1つの策が頭をよぎった。


この策なら確実に行ける。


しかしその分リスクもないわけが無い。


むしろだいぶ賭けに走ってしまうがそれ以外に策が生まれてこないためその策に全て賭けることにした。


「ならすみません、少しこの紙を渡したいのでちょっと失礼」


「あ、ちょっと……」


男子生徒が邪魔をしようとしたが良い感じに抵抗し遂に美神の手に触れることが出来た。


「美神、ちょっと俺のスピードについて来てくれよ」


「え?」


そう言うと輝は美神の掴んでいる手首を思いっきり引っ張り走り出した。


美神は最初こそ驚きで足が上手くついていけていなかったが慣れてきたら輝のスピードに余裕でついていたのだ。


むしろ輝より速い。


「うぉ!や、やば!」


「ふふふ、散々調子乗っておいて結局私の方が早いのね」


「っく!うるせぇ」


「あらそう?」


輝が恐れていたさっき達の男子生徒に捕まるといったことはもはやただの杞憂だったようだ。


美神の顔を見るとさっきまでの泣きそうな顔はどこへ消えていた。


そこにあるのは喜びや嬉しさの顔だ。


少しホッとした輝だがまた結局中学時代と同じ過ちを繰り返してしまった。


しかし目の前の笑顔を守れたという実績のおかげでさらにホッとした。


(まぁこれからもどうにかなるか・・・信頼してる人達もいるし)


とても適当な考えだが深く考えれば嫌なことにしか繋がらないのでそういう適当な考え方で調度良い。、


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


教室に入るとある程度のクラスメイトが教室内に居た。


その中には沙也希と浩史はもちろんいる。


だが要はまだ来ていないようだ。


少しがらんとしている教室の中に入るともう既に着いていた美神が入口の目の前でいた。


「ねぇ輝」


「はぁはぁはぁなんだ?」


「今日は・・・ありがとう・・・それだけ」


そう言うと美神は自分の席に急いで戻った。


そのスピードはとても早く素早い。


無駄のない動きだがそこまで早くなくても良くねとツッコミを入れたいくらいには。


「は、はぁ」


そう声を漏らすしかできなかった。


しかし輝の周りの視線はもはや呪いを含んでいると言っても過言では無いくらいどす黒い視線だ。


その視線がとても居心地悪いのは言わなくてもわかるだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


入学までのくだりを思い出し今の美神をもう一度見るが。


「さっきは変わったなとか言ったけどあんま変わってないな」


「なんか腹立つけどそれで良いわ、輝に変わったと言われたら最悪だし」


「さっき一つだけ良いって・・・」


「その言葉を取り消すし良いとは言ってないわ、良い面では変われてないって言ったじゃないもうこの歳でボケが来たの?」


「冗談冗談!」


でも輝はこうやって冗談を咲かせれるくらいには仲が良くなったのは美神の性格が少し変わったのだと言わないが思っている。


やはり美神は変わった。


そう言い切れる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なら俺電車だから帰るな」


輝はもう美神の家の前まで着いたのでここでおさらばというところだがどうやら何か言いたげな様子で美神はじっと輝を見つめている。


そのせいか中々輝は帰りにくい。


「·····輝」


「どうした?美神」


そう言うと無言で近づき輝の胸をそっと撫でた。


輝はこの行動の意味の理解が追いつかず脳がキャパシティーオーバーしそうだ。


張本人も顔をとても赤く煉獄に変えながら意図を話し出した。


「は、早く治らという意味を·····こめて」


「あ、ありがとな·····早く治すね」


「·····きょ·····今日はありがとう」


恥ずかしさの限界点に達したせいか美神も輝もいつもの余裕を2人とも失いこのような真似になってしまった。


少しかなり気まずい沈黙の後さすがにやばいなと思った輝はICOCAをポケットから取りだし


「す、すまん、まじで帰るの遅くなるから·····帰るね」


「あ、ありがとう·····今日は」


そう言うと輝は急いで駅に向かった。


もちろんだが2人とも特に美神は恥ずかしさで死にたい気持ちしかないのは言うまでもない。


輝も突然の美神の反撃に未だに右ストレートを受けたような気持ちが続く。


(こりゃ明日かなり気まずいな)

(これで明日会うのなら死にたいわ)


美神はこの時もう二度と、変な真似を一時の感情でやらないことを心に固く決意した。

ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)

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