波乱の文化祭編 終わりへ
「くふふ、私たち実は……輝君とどう〜しても会いたいと言ってる人に会わせたいからこんなことしたんだ」
ついに三葉が言葉を発した。
だが雄一とミリヤはどうにも信用ができない。
三葉の目を見るが何を考えているか分からない目なので尚更信用ができない。
「ひとつ聞く!仮に連れていったとしても輝に安全は保証されるのか!」
雄一は抑えながらも叫んで聞いた。
叫ぶ瞬間体に一気に力が入ったが雄一の上に乗り拘束している少女が力を強めたため上手く大きな声が出なかったがこの静かな空間だと確実に聞こえるだろう。
「まぁ〜きちんとしたら安全かなぁ」
他人事のように三葉は言い放った。
この一言に何か嫌な予感を感じたのか雄一は
「うぐっう!ぐぅー」
少女を退かすために体をくねったりして自由を取り戻そうとしたが無言で力を強められ先程までの比にならないくらい苦しくなってきた……
その姿を見て三葉は「ふふふ」と不敵な笑みを浮かべながら笑っていた。
結局使えそうな情報は全くと言って良いほど無い。
大事な情報は黙秘権にて全て隠されている。
「なんか〜もう飽きちゃった」
「そうね彼らには力はないわわ、離すよ」
チャンスと言うにはあまりにも雑でそして罠にしか感じられないチャンス……
しかしたとえ確率が低くても行くのが男……そう覚悟を決めた雄一は少女の拘束がなくなった今……
思いっきり走り始めた。
「距離は近い!おりゃーー!」
だがそれが間違いだったようだ。
よく良く考えればこの状況下で攻めに行くのはもちろん想定内だという事実に気づいていれば……
「やると思った……」
予測通りと言えば予測通り、雄一は少女から逃げられなかった。
もう気がついた時には後ろから声が聞こえそして聞こえた瞬間意識もそこで途絶えた……
(……結局何も出来なかった……あの時冷静に動いていれば……)
冷静な対応が出来なかった雄一は自身の判断の甘さを呪う
「雄一ー!」
ミリヤは雄一が走り出し少女が追いついた時後頭部をまるで映画のように手刀で気を失わせているのに気がついた。
もう気がついた時には遅く雄一の体は力無く倒れ動かなくなってしまった。
ミリヤの体は自由だが先程からずっと尻もちをついたっきり動けない。
先程までは時を待っていたが今は違う……
紛れもない恐怖のせいだ。
歳も余り変わらない2人にミリヤは今は底知れぬ恐怖で体が固まってしまっている。
「んじゃ私達は輝と行くからまったね〜」
地面に尻もちをつき結局ただ見つめるしかできない。
そんなミリヤを三葉は満面の笑みで輝を肩に担ぎ倉庫の裏の方へと回り込んしまった。
もう1人の名を知らぬ少女は気絶した雄一を引きずり校舎を背もたれにさせ寝かせると三葉の行った方に走り出した。
その間もミリヤはただずっと瞬きもせず見つめっぱなしで終わってしまった。
先程までは騒がしかった体育倉庫周辺も今となれば先程の騒然さはどこかへ消え去り……
今あるのは静かかつ冷酷な現実のみだ……




