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病み上がり時々デレ

教室に少し時間はかかりはしたが入ることにできた。


入って中を見ると美神がスマホを珍しくいじりながら座っていたのだ。


周りはもう夕焼けの時間なのに居ることに少し違和感を感じる。


輝のことに気づくと美神は振り返った。


顔は驚きや恥ずかしさを持っている顔だ。


「無理はしてなさそうだな・・・」


「私もそこまで馬鹿ではないわ、輝と違ってね」


美神の少し嫌味ったらしい言葉だが目を見ると冗談で言ってるのが理解出来た。


「それ言われると心にくるものあるわ」


「ふふふ、まぁ輝が無事そうで良かった」


「まぁお陰様でと言うか・・・保健室の先生の力というか」


美神が中々学校では見せない優しい笑みを見せると立ち上がった。


中々見せない笑みなので少しドキッとしたがバレると何言われるかわかっているので頑張って顔を押さえ込んだ。


スマホをポケットにしまい鞄を少し重たそうに持つと輝を無視し教室の出口に向かい歩く。


「なぁひとつ聞いていいか?」


「何?」


華麗で少し儚げのある姿が1度振り向く姿は輝と言えども見とれてしまう。


美神の顔は純粋な疑問の顔を持っているので本人は自覚無しなようだ。


自覚無しならとんでもない人だなと思いつつ輝は言葉を続けた。


「俺をずっと待っていたのか?」


「・・・一応未然に助けて貰った身だからせめて感謝はしないと・・・私のプライドの問題」


「そういう事ね・・・まぁ感謝はしてくれなくてもいいけどしてくれるのならありがたくいただくよ」


「どっちよ」


少し呆れの表情で輝を見ながらこちらに近づいてきた。


わざわざ謝るためだけに待ってくれたのに少し罪悪感はあるが美神は割と感謝は誰にも忘れない。


その性格のせいだろう。


「今日はありがとう・・・とても・・・嬉しかった・・・助けてもらうの初めてだから・・・」


どんどんデクレシェンドのように声が小さくなったが一応輝は全て聞き取れた。


そのため今の美神は逃げることは出来ない。


「ていうことはまたお前の初めてを奪ったというわけか」


「っー!誤解を招く言い方は辞めなさい!」


「痛い痛い、病み上がりの体には痛いよぉ」


顔を茹でダコのように赤くすると美神の激しい張り手が輝の体にあたる。


ちょうど怪我をしたところを叩くのでとても痛い。


しかしこの怪我でいつまでも学校に居る訳もなく早めに帰ろうと輝も用意をする。


鞄を持つが少し体に力が入るので傷が痛くなってきた。


だが苦痛に歪む顔を美神に見せれるわけが無いので頑張ってポーカーフェイスを装うことに決めた。


「とりあえず一緒に帰るか・・・」


「さっきは・・・ごめん・・・」


会話が若干成り立っていない気がするが美神の顔が真っ赤なため多分輝の話は聞こえてないのが100%だ。


声もさっきの感謝を伝える時みたいにデクレシェンドの声のトーンである。


「まぁあれは俺のせいだから大丈夫、あと一緒に帰らないか?」


「・・・良いですよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


輝と美神は駅でお別れなので駅まで向かっている。


運が良いのか悪いのか分からないが美神の家は駅前なので限界まで美神と一緒に居れるのだ。


2人はあまり会話が弾まない。


帰路にはあまり人がいないので物音もあまりない。


強いて言うのなら少し遠いところで車の音が聞こえるだけだ。


2人ともその時一瞬のことに対して喋るような仲なのでこういう長期間の会話には向いていないのだ。


だがこの気まずさを変えるためか美神が口を開けた。


「どうしてここまでするの?」


「どうしてって・・・」


美神の声がどんどん小さくなる。


顔を見てみるとわざと目を逸らしているように感じる。


しかし輝は全て理解しているので触れようとしたがそこを触れられるとまた機嫌悪くなりそうなので大人しく美神の質問に答えた。


「まぁ多分俺の性格は自分の過去に関係ありそうなんだ」


「過去?」


「あぁ、親目の前で殺されて何も出来なかったやるせない気持ち・・・だから目の前で苦しんでたり後々嫌な目に合いそうな人を無視できないんだよ」


美神の顔を話し終えたから見てみると驚きを隠せない表情だ。


ここまで驚くとは思わなかった。


しかしこのまま美神のことをスルーすると本当に明日も気まずくなりそうなので輝は


「まぁ、そんな顔するなよ・・・俺も悪かった」


「・・・ごめん」


「え?」


今までは聞こえていた美神の小声だが今回に関しては聞こえない。


輝の反射的に出てきた言葉に美神は少し不機嫌そうな顔で話し出した。


「ごめん」


「謝ることでは無い・・・」


またあの気まずい空間が生まれてしまった。


美神の顔を見るともう助け舟を出そうとか甘い考えはもうできないだろう。


そのため輝が話さないといけないのだ。


(この空間・・・死ぬほど気まずいのだが・・・もうこれしかない!?)


「関係なくなるけど美神初めてあった時よりだいぶ軟化したよなぁ」


「バカ!」


「痛い痛い」


照れ隠しなのか美神は輝の怪我をしているところをピンポイントではたいた。


もちろんながらとても痛い。


しかし輝自身事実を言ったつもりなのでなぜ殴られているのかよくわかっていない。


だからただただ理不尽だと思っている。


(お、乙女心わかんねぇ)


だが冷静になったのか美神から次は話し出してくれた。


「まぁ実際変われたのは事実・・・輝のおかげで」


顔がだいぶ真っ赤だ。


改めてこの質問の破壊力を言った張本人である輝は理解出来た。


「ははは、だとしたら嬉しいよ」


「少なくとも良い面では変われたつもりは無いわ」


「それはなんか辛い」


美神は輝と繋がりを持ったのは良いが良い面で買われたことはあまりない。


悪い面ではたくさん変われたが。


しかし輝的には少し複雑な心境だ。


でも美神の顔を見ると満足そうな顔なので別に本当に最悪とは思っていなさそうなのが救いだ。


「変われたのなら良かったよ」


「少なくとも初めて心からこんなことが言える友達ができたのは唯一の良い所よ」


「そうかい・・・」


美神の白髪が久しぶりに綺麗に見えた。


「まぁ俺も要以外に真面目にバカやれる友達になれて良かったよ」


「私はバカやってないわ」


美神はすました顔で言っているが輝にはひとつある切り札がある。


今となっては事故と言えるわけが無いが良い思い出程度に流せるくらいのひとつのネタ。


「お泊まりはバカに入るのか?」


「っーー!あ、あんた」


美神はまだ何か言いたげな様子だがこれ以上言っても余計傷口を深めると理解出来たのか不貞腐れた様子で黙った。


また気まずい時間かと覚悟したが次は美神から話してくれた。


しかしそっぽを向いてだ。


ちらっと見えた顔を見ると赤い。


「まぁ、なんやかんや輝は良いやつ程度には見てるから」


「そうか…良かった…俺てっきり」


少し意味深っぽさを出すために途切れ途切れで話すと自動的に美神の視線は輝に移った。


顔を見るとはよやれと言わんばかりの顔なので怒られる前に話す。


「不良のドクズ野郎って思われてるのかと」


「…はぁ」


美神の表情は呆れだ。


その表情に少し驚きが隠せないがその理由はすぐに美神の口から放たれた。


「私がそんなこと思ってたらまず話しかけてないわ、色々あるけど私が困ってる時助けに来るじゃない」


「…たしかにな。初めて会った時もだしな」


「わかってるのなら変な誤解はしないこと」


「あいよ」


輝は少し安堵の気持ちがある。


さっきの不良のドクズ野郎というのは冗談とは言えども少し心配はしていた。


若干だが輝は本能の赴くままに生きているところがあるから危惧したのだ。


しかしそれらの不安は全て美神自身が晴らしてくれた。


安堵が顔に出ていたのか美神がムスッとした表情で、


「やっぱりさっきのなし」


「それは酷くない!?」


「そんな顔させるために言ったわけないでしょ!」


「そのことは本当にぺこり」


「謝る気ないの?」


こうして2人で話すと初めて出会った時の様子と自然と比べてしまうのが輝の悪い癖だ。


今となっては冗談が言い合える仲にまで進展したが初対面は色々とあった。


(こうして今では普通に話してるけど、前と比べると軟化したよなぁ)


2人の出会いは遡るほど数ヶ月前の入学式だ。


······························

ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・`)

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