裏切り
辺り一面本棚の書斎にまたひとつ計画が練られていた。
少し薄暗く陽の光が程よく入る書斎に一真はまた「彼女」を呼んだのだ。
薄暗いが彼女の金色の髪は少量の光でも輝きを纏っていた。
一真は椅子に座り窓の向こう側の景色を見ながら話しかけた。
「美神はどうだ?」
「美神様は大丈夫です……」
金髪の女がそう言うと一真は「はは」と笑い窓の景色を見るのを辞め金髪の女の方を向く。
一真の目はどこか虚ろで何を考えているのかいつも以上に分からない不気味な顔をしている。
その様子だけでも背筋が冷えそうだがさらに怖いのはその後のセリフだ。
「橘輝、彼はどうしてます」
目の色が変わった。
最初から美神のことは何も知る必要もなかったのだろうと暗に示される証拠だ。
本当なら答えたくない。
輝のことを間近で沢山見てきたが故に答えたくない。
しかし恐怖に勝るものはなく……
「美神様と仲良く過ごしております」
「……そういう事だよね」
一真は溜息をつきながら机の上にある紙を見始めた。
なぜいきなり見始めたのかは分からない。
でも何か隠しているのは分かる、それだけは言い切れる自信がある。
「……輝……あいつはだいぶ面倒なものだ……」
「……なぜです?」
彼女はついに聞いてしまった。
聞いて良いのか分からなかった、しかし彼女の知的好奇心が悪い意味で勝ってしまい聞いてしまったのだ。
だが一真は顔色1つも変えずに
「……美神を戻すために1番邪魔だからだよ……早めに消したいぐらいだ」
この時の一真の顔は笑っていた。
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一真は心情が読みにくい、それがある意味長所でもあり短所でもあるような人間であった。
しかし今回のような姿を見てしまうともうそこにある感情は……
「……一真様……私は……あなたの考え方が理解できません」
初めての反抗……初めての宣戦布告でもある。
「何を言っているんだ?ソラ……君は私達に事実上買われたんだよ……過ごし良い扱いを受けたからって調子に乗らないで欲しい」
珍しく一真がムキになりつつある。
いつもは理論的に問い詰めてくる頭脳派が光る男だが今回はソラの反抗に焦っているのかどこか感情的になっているところが節々で見つかる。
いつもやっているコーヒーを飲む動作もどこか手が震えて飲むスピードが早い。
「私がメイドとして尽くすのは……美神様だけです……美神様から命令してください……私は絶対に美神様以外の命令は聞きません」
「お前は!!!」
ソラはこの瞬間を望んでいた。
人間というのは感情的になっている時が1番弱さを出しやすい。
「私は……」
ついに始まる……裏切り……反抗……
ブックマークに、ポイントして欲しいな|ω・)




