後悔と罪の目標
「俺はさ……親が殺されたんだ……」
突然の告白に美神は顔がフリーズしてしまった。
無理はないだろう、人が死ぬのはありがちな話、でも殺されたとなれば話は変わってくる。
そのため美神は言葉が出てこない。
出てこないではなく……出せないのだ。
(下手に言えば……輝を傷つけてしまう……)
色々なことを考えすぎたせいで美神は頭が回らない。それでも輝はまだ話し続ける。
「……もうさ……失いたくないんだなぁって……多分俺……他人が何かしらで死ぬのすら怖くなってるかもしれない……あの人たちにも待ってる家族がいると考えてしまって……」
輝が虚ろな目で天井を見つめた。
その目はどこか悲しみを含んでいるような、そんな感じがする。
「分からないと思うけどさ……失ってしまった人の辛さとか悲しさって計り知れないんだ、俺はみんなにそんな思いをして欲しくない……寿命ならさ納得はできるんだ……でも事故とかそういう不意な死で失うのはさ辛いんだよ、でもなそのおかげで目標ができたんだ」
初めて見る輝の泣きそうな目。
そっと頭を撫でて抱き寄せたいくらいどこか儚く消えてしまいそうな感じだ。
しかし場所も相まって美神は中々行動に出れない。
(まだ私はそんなことで怖がってるの!?目の前にいる彼の方がよっぽどなのに私は!)
「……これ以上さ俺みたいな思いをする人がいなくなって欲しいんだ……それが俺の願いというか目標というか」
「そんなの目標なんかじゃない……」
「え」
輝が突如驚いた様子で美神を見つめた。
その瞳は本気と言いたげな目だ。
「過去の後悔をこの世から消すのが目標?無理だよ……もしかしたらだけど……何か後悔してる?」
「うぐっ!」
痛いところを突かれてしまった。
改めて美神の勘の良さを実感したかもしれない。
「どうなの?」
「……後悔……してるよ!……悔しくて悔しくて!今でも夢に見るくらいにな!」
輝の目から大量の涙が溢れだしてきた。
情けない恥ずかしい、そんな感情は今の輝にはなんぴとも存在していない。
あるのは謎の開放感のみだ。
「誰にも言えなかった!悔しいこと本当は泣きたいくらい悲しいこと!俺は……俺は……」
周りに人がいるなど関係ない、ただ過去からの解放による嬉しさにより輝は声がどんどん大きくなっていく。
先程までは美神も周りを気にしていたが今となれば何も気にしていない。
周りの人なんかより輝の心情を優先させてるのだ。
「……今までよく耐えたね……偉い……偉い」
「ううぅ……ごめん……ごめん……ごめん!」
美神は優しく割れ物を扱うかのように繊細に輝の頭を撫でた。
その手は輝より小さいのに……今はその手の大きさがいつもよりでかく感じる。
「ごめん……ごめん……ごめんなさい」
今はただ謝るしかできない。
親なのか周りの人なのかはたまた両方なのか、それとも……美神なのか。
だが……何か一つ……罪なのか後悔なのか分からないものが消えた……そんな安心感が輝を包み込んだ。
(そうか……俺はこれを待っていたのか……)
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




