真実の感情
最初は寂しい人だと思っていた。
美神を見た時輝は一目惚れだったのだ。
しかし何故ああいった態度だったのかは自分でも分からない。
(怖かったのか…俺は)
そういう感情を持つのが怖かった。
また失ってしまうかもしれないから。
もう嫌なんだ失う立場になるのは……
「あぁ、そうか……俺はずっと変わらなかったんだ……」
昔から失わないために奔走してきた、友達にしろ何にしろ輝は1度大切にしたいと決めたものはとにかく必死になれる性格だ。
そのため何度もあった美神のピンチの時でも輝は駆けつけれたのだ。
「輝……本当にどうしたの」
目の前に心配した様子で見つめている美神を見つめ改めて自分について考えることが出来た。
(失いたくない……俺のわがままだけどこれ以上は)
結局自分のエゴなのはわかっている。でも守りたいものをただ見ているだけだとそのうち砂のようにすり抜けてしまう。
そんな思いはもうしたくない。
(俺も腹を括る時が来たか……美神)
美神の顔を改めてじっくり見て決意が生まれてきた。
しかしこの場では無い……
「な、何じっと見つめてるのよ!」
「あぁすまん……少しぼーっとしてたよ……」
どうやらだいぶ顔を見つめていたらしく美神の顔が血のように赤く染まり焦っている。
「もう!さっきからどこか変だよ?何かあったの?」
美神には全て見抜かれていたようだ。
「過去のこと思い出してしまってね……中々辛い思い出だったよ……」
「輝……」
この後のためにもあまり美神には過去のことは言えない。
そう思い輝は立ち上がった。
先程までは腰に力が抜け立ち上がれなかったのだが今は先程が嘘のように体が軽い。
「んじゃ戻るか……」
輝はずっと座ってる美神にそう伝えると席の方へ歩き出した。
(これで過去とはお別れだ……もう……終わりだ)
だがまだ美神は……
「……美神……どうかしたのか?」
立ち上がって数歩歩いた辺りに輝は止められていたのだ。
美神が輝の服の裾を掴まれていた。
(ここで輝を前へ向かわせたら……もう戻らない気がする……何でかは分からない……でも大切な何か……失ってしまう)
美神の感がそう言っている。
それくらい今の輝には儚さを孕んでいた。
「なんでひとりで抱え込むの!」
「……」
「なんでみんなを助けて自分は助けないの!」
「……」
何も言えない。事実ゆえ言い返すことが出来ないのだ。
「もっと……私たちを……頼ってよ〜……みんな輝の友達でしょ!友達だから助けたい……どんどん弱っていく姿なんて嫌だ」
これが初めてだった。
涙を流し他人に感情を伝えたのは……
それでも輝は一向に話そうとしない。
「……輝……お願い……これ以上抱え込まないで……私は……輝のことを大切な大切な大切な!友達だと思ってるから!」
中々見なかった、美神が本気で叫んで感情を出すところは。
いつもの美神なら常識的な部分が邪魔してこんなことは出来ない。
でも今日は……
「……聞いても良いものでは無いけど良いか?」
「……輝……ありがとう」
ついに輝の口から真相が語られる。
言ったところでその結末が果たしてどうなるのかはまだ分からない。
でも輝も感で理解した。
少しでも言えば何か変わるのかもしれない、責任の重さや罪の重さが……
悪くなっても良くなっても良い……ただ後悔しないためにも……輝は真相を語り始めるのだ!
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




