呪い
あの凄惨な事件から数週間が経った。
ついに迎えた入学式。
辺りには桜が咲き始め新たな者を迎え入れる用意が整いまくっていた。
本来なら親子仲良く入学式を迎えるはずなのだが輝は違う・・・
体育館の中で1人、顔を俯いている人がいた。
「俺は・・・何を・・・」
本当は普通に生きたかった。
何も失わず・・・何も辛い思いをせず。
なんで俺だけ・・・
「ほら輝・・・シャキッとしなさい!」
「おばさん・・・」
輝の後ろから明子が背中を叩いてきた。
その手からは安心が生まれてきたがそれ以上に・・・
「・・・頑張るよ!おばさん」
これから女手1つ。それも歳もかなりとっている人が子供二人を育てるんだ、甘えごとは言えない。
あの手から決意ができた。
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だが決意の裏にはまだ色々な問題点がある
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「なんで私たちを助けてくれなかったの?」
「お前がなんで生きてるんだよ!」
夢に見る。
母なのか父なのか分からない謎の肉塊。
だがこの本来死んだであろう2人が何故か輝の中で夢として出てくるのだ。
夢として出てくる度に
「お前は無意味だ!」
「無価値な肉塊には価値がない」
などと酷く辛く小学一年生に到底浴びせて良い言葉では無い言葉が輝に襲う。
その都度その都度輝は頭を抱えながら小さくなり震え続けているのだ。
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そんな夢を見続けている。
もう嫌だ。
「はっ!はぁはぁ・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
とにかく叫んだ。夢に見る度に叫ぶしかできない。
恐怖なのかそれとも・・・親を見殺しにした罰なのか。
もう分からない、小学一年生の輝には分かるはずもない。
「大丈夫か?輝!」
「おば・・・さん・・・」
「お兄・・・ちゃん?」
「渚・・・」
周りを見渡すとあの時の母と父(怪物)共がいない。
現実なのだ。
輝の隣には渚に明子が心配した様子で輝を見つめている。
その瞬間安堵という感情が押し寄せてきて身体中から出ていた汗がやっと感じてきた。
そのおかげで汗が滝のように流れていたのだと感じられる。
(はぁはぁ夢・・・夢なんだ・・・)
「輝・・・ほら」
「おばさん・・・」
明子が静かに輝を抱きしめた。
その力加減。そして身体中から感じる暖かさ。
それはまるで輝が求めていたなにかなのかもしれない。
毎回感じる度に涙が止まらない。
「ああああ・・・もう俺どうすれば良いんだよ・・・」
「子供がそこまで背負い込むな、輝の親はな絶対後悔してないから、子を守るのが大人なんだ、それをわかってくれ」
明子はそう言ったが
輝自身の手で作ってしまった「呪い」は簡単に払えない。
まだ分からない闇の中、いつ呪いは払えるのか・・・
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




