こぼれ落ちた幸せ
いつだっただろう。
俺の人生が大きく変わったのって・・・
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橘輝は現実での人の生死にとても敏感である。
それが交通事故だったとしても、例え軽いとしても輝には過剰なくらいまで反応してしまうのだ。
そのくらい輝には生死にとても敏感である。
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どうしてこうなったのだろう・・・親が死んでしまったからかなぁ〜
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橘輝と橘渚は普通の家で生まれたごく普通の子供だった。
「輝ー、渚ー、ご飯できたわよ」
「わかったお母さん」
「わーいママー!」
普通の家庭、どこも欠けていない、まるで理想の家庭を築いていた。
この時まだ輝は小学校に入る前だ。
もう時期桜が咲き始め輝も義務教育の第一段階に入る頃だ。
親からしてみたら幸せの絶頂のような気分だろう。
「今日のご飯はハンバーグよー」
「やったー!」
「ワーイ!」
2人は今日の晩御飯が2人とも大好物なハンバーグだということに喜びで跳ね上がっていた。
そんな後悔を見ながら父は笑い
「ほらほら早く食べないと冷めてしまうぞ」
と優しく言ってくれた。
「「はーい」」
輝に渚は素直に父の言うことを聞きまだ温かい大好物のハンバーグにありつく。
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今の輝からしてみれば夢のような日常だった。
「今日はカレーだぞー!」
「「ワーイ!」」
永遠に消えることのない、一生これくらい幸せなのが続くのだろうなと思っていた。
今よくよく考えるととても能天気な考え方で現実味等はあってないようなものだ。
それでも・・・幼き頃の輝は信じていた。
だが幸せ、当たり前が崩れるのはほんの一瞬であった。
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「え、なんで・・・」
輝が見たその光景は家の1回の玄関前で倒れている母の姿だった。
何かあったのだと思い輝は階段から飛び降りるかのようなスピードで駆け下がり母の元まで行った。
「お母さん!お母さん!目を覚まして!」
とにかく揺さぶって生存を確認しようとするも・・・全く動かない、まるでマネキンのように。
だが一向に起きる気がしない。
それどころか・・・
「え、なんで・・・なんでお腹から赤い・・・血・・・」
輝の足元に冷たい液体が流れてきた。
自分の恐怖で漏れた尿かと思ったがそんなことではなかった。
いや、むしろそうであって欲しかったと言うのが正しい。
輝の足元に流れていた液体は血であった。
幼き頃の輝でも分かる、これはただ事ではないと。
「お母さん!起きて!お母さん!」
どれだけゆさぶっても目覚める気配がまるでない。
先程から息もしていないがそんなのをまだ小学生ですらない輝に分かるはずがなく。
だがついに悟ってしまった。
もう輝の母は元に戻らない、この肉の桶となってしまったものにもう二度と同じ魂が入ることは決して無い。
「あ、ああ〜!ああああああああああ!」
幼き頃の輝にはこの体験はあまりにも残酷であまりにも・・・
「いやだあああああああああああああ!」
今の輝には叫ぶしかできない、どこか遠くへと行ってしまった母の魂に語りかけるかのような叫びだった。
「ひ、ひか、輝・・・にげ、ろ・・・なぎ・・・さをつ・・・れて」
「とう・・・さん・・・」
だがまだ地獄は続く・・・
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




