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守り人

輝は割と久しぶりに生徒会室に足を運んだ。


時間的にも雄一もミリヤどころかほとんどの生徒が居ない時間なので輝は特にノックすることなく生徒会室に入った。


「・・・生徒会室をノックもせず入る不届き者は誰かしらね」


「わざわざ遠回しに言わなくても良いだろ」


少しトゲのある言い方だ。


だがその言い方が彼女らしいと言われれば彼女らしい。


輝が生徒会室に入ると2人がけの向かい合わせに置かれている椅子に誰か座っている。


その人は言わなくてもわかるであろう。


「美神、急に呼び出した理由は?」


「・・・知りたいよね・・・」


美神は立ち上がると輝の目の前まで駆け足で歩いてきた。


その美神の瞳は少し不安混じり目なのでどうもここまで積極的に行動している人の目とは思えない。


これらの行動のおかげで輝の心臓はバクバクと高鳴っている。


だがそんなことを思っている間に美神は口を開けだした。


「私・・・また来たの」


「・・・まさか!一真さん!?」


こくりと小さく頷き輝にとっての最悪の展開が当たってしまってしまった。


「い、いつ?」


「体育祭後・・・」


一真はあの後帰ったと見せかけて美神と会っていたらしい。


もっと気を引き締めていたら、もっと集中していれば・・・


輝は今更もう戻れない後悔をしてしまった。


「・・・ごめん」


輝には今ただただ力無く謝るしかできない。


悔しさのせいか自然と強く拳を握り唇を噛み締める。


この血の味はもうトラウマだ・・・『あの時』狂うほど感じた血の味・・・


この無力感は『あの時』嫌という程味わったのに・・・


過去に目の前で親が死に・・・


もっと力があれば・・・もっと早く動けたら・・・もっと覚悟があれば・・・


今でも夢見るくらい幼き輝には刺激かあまりにも高すぎる出来事だった。


「大丈夫?輝・・・」


「あ、あぁ・・・大丈夫」


きちんと答えれたかな・・・不安が見えなかったかな・・・


そんな輝らしくない言葉を並べてしまうくらいあの出来事はトラウマとして今も輝の心の中に力強く残っているのだ。


「こんなこと甚だしいのは分かるの・・・でもたった一つだけお願いがあるの・・・」


「何?」


美神の表情が見えるくらいまで顔を上げるとその顔は先程までの不安に満ちた顔は無い。


だが、そう言ってもまだやはり不安はありそうだ。でもそれ以上に自信がある。


そして数秒程時が進むと美神はついに口を開けた。




「・・・私を守って」


「・・・え?」




この時まるで時間が止まったかのような衝撃をこの身で受けたような気分だ。


なぜ美神を守る人が輝なのか、そういう疑問符として頭の中を回り続けている。


美神は輝の気持ちを読み取ったのか


「・・・あの時言ってくれたでしょ『守りたくなる人』って」


「あ・・・」


借り物競争のお題の時、輝はお題通りに動いた。


だがこれが返って今輝のことを苦しめてしまっている!


「・・・今私は・・・『帰りなさい』と言われてるの・・・でもこの人生で一番楽しい『今』を失いたくないの、さらにそろそろなにか行動を確実に起こすわ」


「もうタイムリミットがないってことか」


美神が小さくこくりと頷いたということなので間違えてはいないようだ。


(俺なんかが美神を守れるのか)


輝はまだ愛も変わらず自信がわかない。


でもここでひとつ覚悟ができそうだ。


(もう腹括って・・・やるしかないのか・・・)


高校生の身で何ができるか分からない。


でもやれることはしたい、『あの時』のような悔しさを・・・今も『あの時』の決着がついていない。


そうとなれば輝に生まれた覚悟はただひとつ。


(これで俺は本当に正真正銘最後の『過去との断ち切りだ』)

ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)

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