往々にして一つの悪の恐怖はいっそうの悪に導く。
時間軸は少し遡り。
この日はとても晴天、遊んだり洗濯したりと何するにしても絶好な日だ。
そんな日に「ある事」は行われていた。
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「……はぁ……美神は帰る気はなさそうか?」
「えぇそのような感じです」
一真は自身の家の書斎にてある女性と話をしていた。
室内は少し暗めだがそれでも彼女の黄金のような色の髪は輝きを纏っている。
書斎はとても広くそして品の良さも垣間見えるそんな場所となっている。
一真の雰囲気ととてもマッチしているが一真の性格を知っている者からすれば品など感じることなどできない。
「……実力行使しかないか」
「えぇそのような感じです」
一真はコーヒーを一杯飲み少し考えてみた。
(あの輝というやつが居なければ楽なのだが……)
美神は目に見えて輝に依存気味だ。
もし美神が輝の元から去ると言えば動かすのには骨が折れるどころか動かない可能性すらある。
今の一真にはいかに楽にどれだけスムーズに美神を持って行けるかが求められている。
「……輝を消さなくては……脱法しないように……」
「殺すのでしょうか?」
女性は凄く直球で言った、この女性は少し抜けているところがあるためそれも計算のうちなのか計算外なのかよく分からないのが彼女のメイドスタイルなのだ。
その一言に一真は軽く笑うと、だがよく見るとその目は笑っていない、どこか闇を含んでいる感じがしてすごく不気味な雰囲気だ。
「ははは、殺しはしないよ……でもだいぶ荒い手は使う」
「……」
不気味な笑いをすると一真はまたカップのコーヒーを飲んだ。
少し時間が経っていたせいか冷めかけているおかげかゴクゴクとコーヒーが飲める。
中身が何も入っていないコーヒーカップをサイドテーブルに置くと一真は書斎から一冊の本を取りだした。
「今君は私に恐怖を抱いているだろ」
「!?」
突然の一言で女性は背筋が凍りついた。
心の声が聞こえるのかはたまた顔でバレていたのか知るのは一真のみだ。
そんな女性に一真は本に視線を移しながら
「ある人が言った『遠くにいると恐怖を感じるが、近くに迫ると、それほどでもない。』とな」
「……」
「君は私が育てたのだよ……私の事を遠く見ているのかい?」
一真の声は聞こえないが声がいつもの話す時と同じという点も既に恐ろしいが何より恐ろしいのはその心の底では何を考えているのか全く分からないということだ。
分からないほど怖いものは無い。
「まぁそんなことはどうだってよい……」
「……」
女性は先程から声が出ない、恐怖のせいか……よく分からない。
だがどれだけ声を出そうとしてもあともう少しの所で声が詰まる。
「『目的を見つけよ。手段は後からついてくる。』その言葉の通り今は静かに待ちましょう……時が来るまでは……」
一真はそう言うと読者に集中し始めた。
だが女性は体が動けない。
一真が黙ったということはこの報告が終わったということなのに何故か動かせない。
(……一真……彼はおかしい)
一真は黙りながら本を読んでいるがその後ろ姿からもオーラが飛んできてくる、そのオーラのせいか足が止まり汗が止まらなくなってしまう。
(……一真を止めるべきなのか……)
彼女は彼の考えていることは悪なのではないかと疑いつつある、しかしそんな思考はこの場では消えてなくなってしまいそうだ。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




