体育祭編 競技(3)
「美神がぼーっとしてたせいで結構危ういじゃねぇか」
「・・・そんな急に来るからでしょ!」
輝が美神の腕を引っ張り転けそうになり支えた1連の行動により脳がショートしてしまった美神を連れてくるのは時間がかかった。
そのためもう後続の人は既にお題のものをもちゴールに向かいつつある。
「遠いな!」
輝と美神がいる地点からゴールまでまぁまぁ距離がある。
「なんだ、あの地味なやつなんで美神さんを」
「何のお題なのだろう」
「やっぱ好きな人とか」
「ないない」
美神は学年問わず顔が知れ渡っているほどの人物だ。
そんな人物を特に目立ちもしない立ち位置にいる輝が連れていたらもちろんみんな目が行く。
そのため少なからず輝からすればあまり良くない目立ち方をし、良くないことを美神は聞いてしまっている。
だが肝心な輝が聞こえていないため輝のためにもこの悔しさを抑え込むことにした。
「どうかしたのか?」
「……え!あ、べ、別に」
どうやらだいぶ意識が上の空になりかけていたようだ。
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「お、1着目は……」
「「間に合ったー!」」
輝と美神、2人とも基礎的な運動能力は互いに高いため本気で2人が走れば後続との距離を大いに開けてゴールすることが出来た。
そのため2人は1位でのゴールに成功した。
この時美神からは最初の緊張感などほとんどなく、あるものは1位を取ったという満足感のみだ。
「輝……いえい!」
「お、そうだな!いえい!」
2人は気分が互いに良いためゴール地点でハイタッチをした。
その姿はまるでお互いが同性の友達感覚でやっているためか周りの生徒からは羨ましそうな視線が飛んでくる。
「あ、あのノリノリなところ悪いのですがもう全員ゴールしたので座ってもらっても?」
「あ、はい」
ゴール前にいた係員の生徒が申し訳なさそうに言われるも輝と美神はその一言でハッとしたのか今更ながら恥ずかしくなってきた。
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選手たちが朝礼台の方を向きながら競技結果の発表を聞くため座っている。
「ではまず1年生ブロックの!1位!1年Y組のお題から!」
声的にも実況をしていた生徒が結果も発表するようだ。
マイクがなくても響き渡りそうなくらい大きな声が会場全体を包む。
だが美神はそれどころでは無い。
今美神は輝がどんなお題で何故美神を連れてきたのか全くわかっていない。
(どどどどどどうしよう……もしこれが……こくはく……だったら……どうしよう)
だが時間は優しくなく美神に心の余裕を作る間もなく過ぎていく。
(せ、せせせせめて深呼吸だけでも)
焦りのせいか美神の心情は目の中がぐるぐる回っているエフェクトをつけても何ら違和感のない状態になっている。
「1位のお題は……
(待ってー!)
だが時間が止まるなどそんなわけもない……
美神はここまで来たのなら腹を括って聞く、そう覚悟が決まった。
1番仲の良い異性の友達だ!」
この時美神は輝のことをヘタレヘタレという要の気持ちを痛いほど実感した。
周りの生徒もザワザワしていたがこの一言で一気にザワザワしていた女子の声が消えていった。
しかし男子は「美神様と関係があるだけ良いじゃねぇか!」と言っていたりするためあまりザワメキが減っていない。
そしてついに輝にも気づいたようだ。
あたりの視線がどこか棘を持っている視線なことに……
「あ、あれ?俺なんかやってしまったか」
だが肝心の輝が何も分かっていないようだ。
(このヘタレバカ……)
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




