体育祭編 競技(2)
「っくそ!ここからだと遠いな」
お題を見て覚悟を決めたのは良いがここから「例の人」の元に行くまでかなり遠い。
「例の人」がいるテントは校舎側に最も近いテントなため校庭の橋の方にいる輝は1位をとるためにはここから走って何とか「例の人」を連れ出さなきゃ行けない。
「もう今は走るしかないな」
結局輝は考えるよりも行動した方が良いと想い諦めて走り出した。
(間に合ってくれよ)
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美神は輝の競技を見ていた。
最初は最下位だと予想していたが要が「輝は足だけは速いんだぜ〜」と言い1位を予想した。
この賭けで美神はまた知らない輝の新たな面を知ることが出来た。それは輝が足が速いということだ。
その速さは思わず目を見開きながら校庭を走り回る輝から目を話せなくなる程度には驚きだ。
「ね、言ったでしょ……まぁこの後の障害物どうなるかは全く予想してないけど」
「……でも速い……輝って速いのね」
美神はこの時他の選手が輝に真っ向から走っても勝てないという事実に気づいた。
(凄く速いわ……)
「た、橘君って速いのですね!」
「そうだろそうだろ、私が育てたのだよ」
こいしが驚いた様子で要に聞いてきた、聞かれた要はどこか得意げな様子だ。
ツッコミが居ないためボケがそのまま放置される自体だが誰もこの違和感に気が付かないままこの時は終わりそうだ。
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「……ね、美神……なんか近づいてない?」
「近づいてるって?」
要が校庭を指差しながら美神に聞いてきた。
その要の顔は普段あまり見せない悩みを持っている顔だ。
中々無いため少し恐怖心が生まれてきたが要の指さす方を向いたが異変など全くない。
「特にないけど……」
「輝よ、輝が近づいているのよ!」
要の言葉の意味がまだきちんと理解出来ていない美神はじっと工程を見たがあまり分からない。
しかし数秒間見つめてやっとわかった。
要の言葉の意味を
「は、速!なに!なんで!」
「確か最後の障害物の……お題のやつ!?」
「え、ええ!」
要が輝が死にものぐるいで走っているのか理由を突き止めた。
だがなぜお題のためにわざわざ美神の方へ行くのかまだ美神自身わかっていない。
しかし要の次の一言が……こんな呑気なことを考えていた美神の平穏を壊すことになった。
「なんで私たちのところに……」
「もしかしたら……好きな人……とか?」
その一言を聞いた時美神は初めてバカになった。
バカの定義は人それぞれだが美神は脳が働かないというのをバカだと思っている。
今美神は思考が何も出来ないくらい焦ってしまった。
「え、な、なんで!え!」
要の妙にニヤニヤした笑みを含んでいる顔を見るに美神は今とても顔が真っ赤だということを知る。
輝が着くまで心の準備をしようと思ったが現実はそこまで甘くない。
輝の足の速さのおかげか美神が気づいた頃にはもうテント前まで来ていた。
「美神!着いてきてくれ!説明は後だ!」
「あ、あ、え、あ」
「美神、行きなさい!」
要が現実を理解出来ていない美神の腕を思いっきり引っ張ると輝に向かい投げるように突き飛ばした。
「きゃ、あ!」
まだ現実を理解出来ていない脳のせいか美神は突き飛ばされたのもまだ理解出来ていないらしく足を躓いてしまった。
それに気づいたのは要の声からだ。
「美神!美神!ごめん!私が変なことしたせいで!」
この一言で美神が今転けたかけているということを知った。
だな知った時にはもう既に地面とキスする寸前だった。
(あ、転けたのね……痛いかな……恥ずかしい)
「美神!大丈夫か!」
美神は痛み、恥ずかしさを受け入れる覚悟を決めたが中々地面とくっつかない。
何故なのかと思い辺りを見回すと美神の肩に手が乗っている。
恐る恐る手の主の元へ視線を向けると
「ひ、輝!」
「美神……大丈夫みたいだな……ふー」
「ごめん!美神」
この時美神は自分が今輝によって支えられているということを知った。
そのことを完全に理解するととてつもない恥ずかしさが同時に湧いてきた。
「……!?は、恥ずかしい……」
美神は顔を真っ赤にしているのを隠すため顔に両手を置き自分の表情を隠しながら呻き声を上げた。
その間輝はずっと何も分かっていないため美神に「大丈夫か?」と聞くばかりだ。
しかしそのセリフは逆効果……むしろ美神の精神を逆に攻撃しているのだ。
「……このバカー……」
ゆでダコのように顔を赤く染めプシューと音が出そうなくらい熱い恥ずかしさを感じている美神はずっと顔を隠しながら未だに呻き声を上げている。
だが輝はまだ何のことか気づいていない。
その二人を見て要は呆れた表情を浮かべながら
(輝のクソボケっぷりには美神もしんどいよなぁ)
と考えてしまった。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




